内容説明
「彼女を死なせた。死なせてしまった」血に濡れた両手を差し出しそう告げたのを最後に、容疑者は完全に口を閉ざした。浴槽の中で見つかった内縁の妻の死体。見かけどおりの単純な事件なのか、それとも…すべての鍵はその沈黙の中にある。事件関係者、警官、検察官、弁護士、それぞれに過去を背負う登場人物が織りなす迫真の群像劇。緻密な構成と真実を追う者たちへの温かな眼差しが光る現役弁護士作家渾身のデビュー作。
著者等紹介
ローテンバーグ,ロバート[ローテンバーグ,ロバート][Rotenberg,Robert]
1953年、カナダのオンタリオ州トロント生まれ。ロースクールを卒業後パリに渡り、英文雑誌の編集者として活動。その後トロントに戻り、自らの雑誌を創刊したが軌道に乗らず、映画やラジオ業界などで様々な職を経験した。37歳のとき弁護士を開業。そのかたわらで執筆を続け、『完全なる沈黙』でデビュー。妻、3人の子供とともにトロントに在住
七搦理美子[ナナカラゲリミコ]
津田塾大学国際関係学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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goro@the_booby
52
もう少しガツンと来るかな?と思って読み続けたが、そこまではなかったなぁ~。まぁそんな時もあるわなぁ~。本の帯にあるように「真実はどうあれ、人生はつづくー」がこの物語を表す最適なまとめだと思った次第です。唯一光ったのは終わり近くに本筋とは違うがバーグマンとボガードのくだりだな。「カサブランカ」は男のやせ我慢映画だとやはり思った次第です。2019/04/23
GaGa
28
ここまで多視点で描かなくてもいいだろうと思ったが、読後感は悪くなかった。検察とともに動く警察が、有罪認めている被告に対して正義を貫くというのはさすがに絵空事にも思えるが、舞台がトロントで、それぞれかかわる者たちが過去のある移民というところで強引に納得した(笑)2011/07/12
Betty
4
事件に関わる多数の人物が交互に描かれ散漫になりそうな展開ですが、それぞれの人物に好感が持てダレる事無く楽しめました。ミステリ部分でスッキリしないラストだけが残念。2010/02/08
プリザエース
3
作品の出来に関しここのレビューでは全体的に不評で私も同意にやぶさかではないが、トロントという自分に何の関係もない都市の景色を文章を通して想像する事は楽しかった。幕ごとに主体が入れ替わる手法自体は悪くないが、その流れのせいで肝心の被告が埋もれてしまった感があり、加えて私が感情移入できそうなキャラが見つからないという壁もあった。ヒントを小出しにしながら展開する有罪/無罪の話なら被告の死刑執行カウントダウンもある「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル(映画)」のほうが数段上だろう。2019/09/17
オイリー
2
途中でよくあるサスペンスの話かなとオチを予想しながら読んでいましたが見事に裏切られました。登場人物が多くそれぞれの人達が全てに関わってくるので面白かったです。文中の「1日24時間朝食を出している」で笑ってしまいました。2015/09/27