出版社内容情報
肺を患う妻とその夫。精神の葛藤を超えてたどり着く愛とは。三好十郎の最高傑作が登場
内容説明
戦時下の夏の終わり、千葉市郊外の海辺の家で、洋画家久我五郎は肺を患う妻の美緒を看病している。美緒を実の子のように世話をする小母さん、戦地へ向かう五郎の親友の源一郎、不動産相続に気を揉む実母など、病床の美緒のまわりをさまざまなひとが行きかうなか、美緒の病状も一向に快方にむかわず…。作者自身が「血みどろになってのたうちまわっている」作品と評し、生きることをみつめた私戯曲。
著者等紹介
三好十郎[ミヨシジュウロウ]
1902年、佐賀市生まれ。劇作家・詩人。孤児として少年期を過ごし、苦学して佐賀中学校を卒業。その後上京し、早稲田大学文学部に進学。在学中の24年、“早稲田文學”に『雨夜三曲』など詩5篇を発表、詩人としてデビュー。PCL(現・東宝)文芸部に4年間在職、映画シナリオ執筆に携わる。『炎の人』は51年中の初演・再演併せて演劇史上空前の観客動員数10万人を記録した。翌年『炎の人』その他で第3回読売文学賞を受賞。57年『水仙と木魚』が日本初のテレビドラマとしてNHKにて放映(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
104
生きるとは何か?芸術とは何か?男女の愛とは?そういった根源的な問題を第2次世界大戦中の日本を舞台に描く戯曲。一つ一つの台詞が情熱に満ちており、読み手の胸に熱い感情を呼び起こす。あまりにも真っ当なことがテーマになっているので、陳腐な内容に陥ってしまう危険性があると思うのだが、作者の人生に対する真摯な姿勢が根底のあるせいか、読んでいて清々しい気持ちになった。実際の舞台も見てみたいと思う。2015/09/13
りえこ
17
人の命の大切さや、思いやりや愛情をしみじみ感じました。日常的だけどドラマがあり、空気感がものすごく伝わってくる作品。2017/05/21
ryoko
6
死を前にして生は輝く。生きる標を失いつつも、のたうち回ってその死に抗う五郎の台詞は、魂を震わせるほど圧倒的に力強い。もう一度上演してほしいです。2013/12/12
法水
4
先日、長塚圭史さん演出による葛河思潮社の公演を観てから読んだ。ここに出てくる久我五郎なる洋画家は、この前読んだ武者小路実篤さんの短篇集に出てくる芸術家に重なる部分が多いけど、戦時下における芸術家というものは非常時に芸術が何の役に立つのかということを否が応でも意識しなければいけない存在だったのだな。戯曲の方が登場人物の内面がよく分かったけど、それでもやはり4時間近くをかけて上演するような話ではないなという印象は変わらなかった。2016/09/08
うりきち
4
舞台は長塚圭史演出のものも新国立のものも見そびれてしまったけれど、この一冊の凄みといったら…。今でも古びないどころかいよいよ人々の心に突き刺さる。文庫にも再録されている著者あとがきは必読。2013/04/06
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