内容説明
ローラは寂しい少女だった。両親の愛は、若くして死んだ兄に向けられ、さらに生まれたばかりの妹シャーリーがその愛を奪おうとしている。ローラは嫉妬を覚えた。だが、家が火災に見舞われ妹を救いだしたことで、ローラは愛する歓びを知り、ひたすらシャーリーに愛を注ぎこむ。それが妹の重荷になるとも知らず…。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な臆測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
中村妙子[ナカムラタエコ]
東京大学文学部卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
82
愛を一手に独占する赤ん坊の妹に対して、死んじゃわないかと思った姉。 それでも、火事のときに、夢中で助け出そうとした人間性。人間の性格はなかなか直せないが、愛されることによって変わるかもしれないという望みは残った。愛するときの重さと、愛されるときの重さの、性格が違うことが分った。どちらか一方では、手抜かりなのだということを感じた。 ps.解説において、ハンセン病に対する時代的な認識の限界について断りがある。原作を書き換えると、時代的な認識の限界が分からなくなる。書き換えはるのでなく解説で言及しており必読。2013/04/29
yumiha
49
メアリ・ウェストマコット名義6冊の最後を書いたクリスティーは66歳だった。だからか、人生訓っぽい。ヨブ記の記述まで登場する。愛されることは、重荷を背負うこと。愛した相手に重荷を課してしまったことに気づいている人は、どれだけいるのだろう?ローラもシャーリーも気づけなかった。さて、伝道者ルウェインよりも、ちょっとひねくれたような老人ボードルックの方が好ましいと思った。2021/12/14
ちゅんさん
41
メアリ・ウェストマコット名義の作品。“ミステリの女王”と呼ばれるクリスティーだが私は非ミステリであるメアリ・ウェストマコット名義の作品が好きだ。人の気持ちって自分でもわからない時があるのに、他人の幸せなんてわかるはずないよね。結局人は悩み苦しみ過ちを犯しながら生きていくしかない。そういう頑張って生きてる人間味がある人が好きです。2024/02/19
花乃雪音
34
メアリ・ウェストマコット名義6冊目。両親の愛は初め兄のチャールズに、兄の死後は妹のシャーリーに注がれた。ローラは赤ちゃんのシャーリーの死を望む、だが火事の際シャーリーを助けた時、妹への愛に目覚める。全編通してローラは柔らかではあるが否定的に書かれている、シャーリーの幸せとは言い難い境遇の遠因がローラにあるかのように。しかし、シャーリーの境遇は自らが招いたものにしか見えない。この結末に至り愛の物語というより自立と逃避の物語として読んだ。2020/11/18
Tanaka9999
26
2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。解説は馬場啓一(作家)。第二部までは普通(?)の小説。姉妹の愛し方愛され方とそれに伴う人格形成の物語として恐ろしいがとても理解できるお話。第三部は突然高尚な感じのお話が始まったような感じがして唐突に感じる。とはいえその部分が第四部、ラストに繋がる、のだろう。2021/04/08