内容説明
大都会ロンドンの一画に、エドワード王朝時代そのままのたたずまいを保つバートラム・ホテル。だが、その平和で静穏なムードの裏でも、事件の影はうごめいていたのだ。常連客の牧師が謎めいた失踪をとげ、やがて霧の夜、恐るべき殺人事件が!ホテルで休暇を過ごしていたミス・マープルが暴く、驚愕の真実とは。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な臆測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
乾信一郎[イヌイシンイチロウ]
1906年生、1930年青山学院商科卒、2000年没、作家、翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
94
〈変わるものと変わらないもの〉を見極めるのは、どんなビジネスにも不可欠な条件。ロンドンの一画にあるバートラム・ホテルは、エドワード王朝時代の佇まいを保っている。格式高いもてなし、静穏な空間。しかし「同じであればあるほど物は変わる」と、ホテルの醸し出す異質さをミス・マープルは見抜く。謎の失踪を遂げた常連客の牧師。だが彼女は失踪当日、牧師をみていた。小さな綻びが重なり、やがて霧の夜、事件は起こる。これまで読んだクリスティの中では、精緻なパズルのような謎解きより、欲に溺れた人間の醜さが強調された作品だと思った。2015/02/11
中原れい
67
ホテルの様子・マープル・人物A・人物B・警察…の様子がかわるがわる描かれ、特に重点がない印象。明確に事件を追っている警察の腕利き主任警部が途中から主体になり、聞き込みするうちマープルの能力に気が付いて…という運びなので、あまりマープルものらしくない。それぞれ魅力ある人物なのでそこが残念。最後のほう、ホテルに絡めたマープルの懐術が切ないです。2015/04/02
NAO
66
バートラム・ホテルに滞在していたミス・マープルが事件に遭遇する軽めのミステリ。ハイソな人々を見かけては声をかけるのが楽しみなセリナ・ヘイジー夫人は前半の狂言回し、とにかく物忘れがひどいペニファザー牧師は道化役といったところ。そして、この道化役のペニファザー牧師が、バートラム・ホテルの秘密を暴く重要な役回りを担っている。この喜劇的な2人と、利己的な悪役たちとの対比が見事。2023/06/12
キムチ27
58
バートラムホテルという名称だけが記憶に残っていての再読。正直、マープルさんは傍観者というイメージ。中盤過ぎての事件発生まではノスタルジックなマープルさんの世界に伴走した。列車強盗事件が大掛かりすぎて、作り物めいた気がしないでもない。でも 警部が大活躍しているのは楽しい。マープルさんの随所随処でのアドバイスが小気味よく、いいスパイスを与えていた。あの牧師様・・初老期認知症かな。映像で見た時、セジウィックが予想通りの印象でストーリー展開に良い役割と味を添えている2020/03/27
Tanaka9999
55
昔の雰囲気を持ったホテルが主な舞台。その中で心地よく過ごしているように見えてなんとなく違和感を感じるところが、この本らしいか。なかなか、事件が起きず、事件は現在起きているものでなく過去の事件が語られる。殺人が起きたかと思うと、結構あっというまに解決が示される。なんとなくその解決で正解なのだろうか、とは思うが、蓋然性は高そう。2019/10/02