内容説明
ふと目に留まった見知らぬ人の鞄と、そこからのぞく財布。サーシャはこらえきれず財布に手を伸ばすが…。問題を抱える若い女性と、その上司の元パンクロッカーからはじまる物語は、過去と未来を行き来しながら、二人が人生の軌跡を交えた人々につながっていく。あふれる詩情と優れた構成で描かれる、さまざまな生の落胆と希望。世界的ベストセラーとなったピュリッツァー賞、全米批評家協会賞受賞作。
著者等紹介
イーガン,ジェニファー[イーガン,ジェニファー] [Egan,Jennifer]
1962年、シカゴ生まれ。ペンシルヴァニア大学卒業。1993年に短篇集Emerald Cityを刊行。1995年に発表した初の長篇『インヴィジブル・サーカス』はベストセラーとなり、映画化された。長篇第二作Look at Me(2001)で全米図書賞最終候補となり、『ならずものがやってくる』でピュリッツァー賞、全米批評家協会賞、ロサンゼルス・タイムズ文学賞、全英図書賞(国際部門)を受賞。ニューヨーク在住
谷崎由依[タニザキユイ]
京都大学文学研究科修士課程修了、作家、翻訳家、近畿大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
95
親もつらいのだと子供は理解するべきなのか。サーシャがそうしてしまう原因は? ルルは? 子は親を見ている。親も子の反応を観察している。みな、傷つきやすく、深く傷ついている。うまくいく離婚なんて、子供からしたらないのじゃないかとは言ってはいけないことだ。親もつらいのだから。それをこうやってバラバラに書くことでうまく表現されているなと思う。1番愛すべきなのは、釣った大きな魚をプレゼントにしようと思った男。たずねたいのは、流された男は、どこから語っているのかということ。2024/01/08
Willie the Wildcat
51
青春時代からそれぞれの道。〇☓世界は同じも、過程に差異。視点が異なることで、同じ世界にも差異。解は、”構造性”か。嫌悪、憤慨、愛着、不適合、欲望、執着、そして不満・・・。60年代後半のUS反戦・ヒッピー時代を彷彿。「A」から「B」は時に主副、時に主主。人生の転機ではあるが、そこに持続性。人生の表裏を踏まえた紆余曲折の中、前進する1人1人姿勢と関係性の変遷、特に”再構築”に共感。人の歩む道って、〇☓だけじゃないんだよなぁ。2016/10/29
ちえ
41
13の章はそれぞれ主人公が違いながら少しずつ登場人物が重なっている。途中でA,Bと分かれていて、解説を読んでやっとわかったのだがレコードアルバムの様な凝った作りになっている。各章の作りも独特。60年代から現代、あるいはもう少し先のアメリカの変わり様をニューヨークを舞台に描いていて、読み終わる頃に、時間は過ぎていながら始めに戻っているようにも感じた。アメリカのロック事情を詳しければより楽しめただろう。◆ガーディアン10002020/01/18
つねじろう
28
最初、くやもなるっのらてがずと読んでしまった。出足と云うか序盤は取っ付き難い。だってピューリッツア賞だもの。途中でレコードのアルバム仕立てと云うことに気付いたら読み易くなった。高校時代のパンクバンドメンバーの光と影。その過ごした時間は誰にとっても平等なはずなのに結果は其々違うという皮肉や残酷さを物語つつでもそれ一辺倒じゃないんだぞ的な気持ち良い裏切りもある。各々の章の視点や文体の違い(パワポで度肝を抜かれる)で惑わされてはいけない。本当のボーカルの声に耳を貸さないとならずものを見過ごしてしまう。傑作です。2015/05/03
ぱなま(さなぎ)
23
お、おもしろ〜。最初から最後までくまなく全てのページが面白い。初めは短編集かと思ったら、主となる複数の人物の様々な人生の段階を各章ごとに描いた長編だった。たとえば独身時代、思春期の頃、仕事の成功と凋落・復活、何度目かの結婚、思春期の娘から見た姿…。ある時期にはひとりの人物の本質だと思えた部分が、別の時期には全くそうではなく思えることもあるし、あるいはその逆も。そして舞台となるニューヨークという街の、よそものには想像するしかない横顔。青春であり、失われた過去であり、予想外に変化し続ける未来でもある。2021/01/17