内容説明
コネティカットの農家に長男として生まれたアダム・トラスク。暴力を嫌い、つねに平穏を求める従順な青年に育ったが、厳格な父サイラスの愛を渇望する腹違いの弟チャールズに虐げられ、辛い日々を送っていた。サイラスは息子の弱さと兄弟の不仲を案じ、アダムにインディアン討伐の騎兵隊に参加するよう命令するが…。アメリカ文学を代表する文豪が渾身の筆で描き上げた、父と子の物語の新訳版。
著者等紹介
スタインベック,ジョン[スタインベック,ジョン][Steinbeck,John]
作家、脚本家。1902年、カリフォルニア州サリーナスに生まれる。スタンフォード大学在学中から小説家を目指し、35年の『トティーヤ平』で一躍脚光を浴びると、『ハツカネズミと人間』など次々と問題作を発表した。ユートピアを求め西部へと移住する労働者家族を描き、ピュリッツァー賞を獲得した『怒りの葡萄』は一部の州で発禁となるなど賛否の激論を呼び、空前の大ベストセラーを記録。52年発表の『エデンの東』では、自らの一族の歴史を下敷きに、父と子の葛藤のドラマを壮大なスケールで描き上げ、著者の文学的名声を確固たるものとした。62年には長年の功績に対しノーベル文学賞が授与された。68年没
土屋政雄[ツチヤマサオ]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
433
本書は最初からかなりな長編の構想を建てて執筆され始めたのだろう。第1巻では、サリーナスの景(そこはスタインベック自身の故郷でもあるようだ)が丁寧に描かれ、父親のサイラス、そしてアダムとチャールズの世代が描かれるが、そのあたりまでは物語としての変化には乏しい。彼らの中にあって、サイラスのみは大きく変貌を遂げるのだが。ただ、彼の栄達と莫大な遺産とは、スタインベックの小説にあっては、いささかリアリティのありようが疑問である。やがて物語はキャシーの登場によって大きく動き出す。しかも、それは不穏な予兆を孕みながら。2020/07/21
遥かなる想い
187
南北戦争から第一次世界大戦にかけての アメリカ 西海岸の家族三代の物語である。 広大な自然を背景に、 第1巻は アダム、チャールズ兄弟の確執・成長、 美貌のキャサリンの生き様を 淡々と描く。 兄弟とキャサリンの出会いには 不気味な 予感を感じるが…次巻以降の展開が楽しみ。2018/09/10
セウテス
83
〔再読〕ジェームズ・ディーンの映画が有名な作品で、映画は後半部に当たる。旧約聖書創世記の物語で、アダムとイヴの息子兄カインと弟アベルが、人類初の殺人の加害者と被害者となってしまう。結果、カインはエデンの地を追放となる物語。本巻は父に愛された臆病なアダムと、父に愛されなかったが自由奔放なチャールズの兄弟が、確執仕合いながらも成長していく物語。今回は、父の兄弟への思いの違いや兄弟の父への思いの違いが、個を基準とする民族の特徴に感じた。学生時代とは感じ方が違う作品というのも、数多いわけではなく不思議と心地良い。2018/11/19
巨峰
52
ずっと読みたかった「エデンの東」トラスク家とハミルトン家。2つの家族の物語が語られます。平易な、読みやすい訳文もあいまって、興味が持続します。ここまで、凄く面白い2024/09/06
ちえ
44
カリフォルニア州北部サリーナスの描写から始まる。美しい。作者の故郷ということで描写から懐かしさと土地へ愛情が感じられた。アイルランドからアメリカに渡った祖父サミュエルのハミルトン家の話とサイラス・トラスクを父親とする異母兄弟の話が交互に語られる。そこに「怪物」と作者がいうキャシーの話が始まり、トラスク兄弟と絡む不穏なところで2巻へ。◆『怒りの葡萄』『ハツカネズミと人間』共に心を揺さぶられた。次はこの本をと決めていた四巻もののこの作品。第100回ガーディアン必読1000冊イベントで読書中。2023/09/16