内容説明
ヴェネツィアで消えた富豪の生死を確かめてほしい―刑事警察のゼンは、昔の恋人から思わぬ仕事を頼まれた。行方不明の男は、彼女の夫が勤める法律事務所の顧客だという。多額の報酬を約束された彼は、口実をつくり生まれ故郷のヴェネツィアに赴く。が、そこで複雑怪奇な事件に巻き込まれることに…英国推理作家協会賞を二度受賞した名シリーズの最新作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
181
イタリアのヴェネチアの異国情緒に あふれた 何とも言えない 雰囲気が心地よい。 ヴェネチアに対する欧州人の郷愁的な 感情が垣間見られる。 刑事ゼンの視点で展開される謎の追跡が 欧州につきまとうユダヤの問題に 繋がるのが定番だが..全体的に 水都を描くという感じで、映像が 浮かんでくる..この映像がなぜか モノトーンなのが可笑しい..そんな物語だった。2016/10/15
セウテス
91
【イタリア警察ゼン警視】シリーズ第4弾。欧州の水の都ヴェネツィアを舞台に、行方不明者を捜す。ゼン警視は米国の友人弁護士の依頼で、この人物の捜索をかなりの報酬で引き受ける。こうした事を始め政界や官界の中に賄賂などの影響が、当たり前に存在すると感じる。私からするとかなり違和感のある部分が在り、本作もミステリというよりは政治闘争に重点があるクライムストーリーだと思う。こうなると作者のミステリに対する考え方や、登場人物に魅力を感じなければ読みたい本では無くなる。エンターテイメントとしては、良作なのかも知れないが。2020/02/26
NAO
69
内務省刑事警察の副警察本部長アウリシオ・ゼン故郷ヴェネツィアでの不法侵入事件の捜査に、ローマから戻ってきた。だが、それは表向きの口実で、本当の目的は別にあった。 不法侵入事件とゼンが捜査している本来の事件、二つの事件を通して、財産に関する古く醜いまでの親族間の争いと、新興政治家の裏側の姿という、ヴェネツィアの旧と新の二つの世界が描かれている。そのどちらもが、ヴェネツィアに住む人々と深く繋がっている。それを冷静に見ることができるのは、何のしがらみもないに等しいゼンのような者だけなのだろう。 2020/10/29
みっぴー
38
ガーディアン1000のcrimeから適当にチョイス。水の都を舞台にしたミステリのはずが、メインは政治闘争。ヴェネチアの黒い部分ばかりが記述されていて、正直ちょっと残念…。登場人物の名前が長いし似ているしややこしい敬称を付けたりで、把握するのに四苦八苦。主人公が警察官、目的は人探しなのでミステリというよりは捜査小説になりますが、捜査らしい捜査はしてないように思いました。ガーディアン誌は何を基準に選んでいるのでしょうか…2016/02/08
Miyoshi Hirotaka
19
アドリア海の最深部に位置するベネツィア。多くの表記揺れが存在するこの街は、古くから国際都市として栄えた。『ベニスの商人』にはその最盛期が描写される。事件はベネツィア人の手で共和国を樹立しようという政治運動を背景に起きた。先の大戦の遺恨を追えば、全員が犯罪者で、皆がナショナリズムを主張したらそこら中が国境だらけになるし、何もしなければ街は巨大資本に支配されたテーマパークになる。自分の生まれ故郷なのにそれまで見えなかった暗部が次々と明らかになり、敵と味方の区別がなくなり、孤独感に苛まれ、疲弊する姿が虚しい。2023/02/19