出版社内容情報
〔アルバート・サムスン・シリーズ〕お願い、わたしの生物学上の父を探してほしいの――大富豪クリスタル家の一人娘エロイーズの依頼を引き受けたサムスンは、こころならずも名家の巨富をめぐる醜悪な争いに巻き込まれてゆく……暴力を憎む心優しき知性派探偵アルバート・サムスン、文庫初登場! 改訳決定版。
内容説明
お願い、わたしの生物学上の父を探して―。閑散としたオフィスに突然飛び込んできた少女にサムスンは面食らった。大富豪クリスタル家の一人娘が、血液型から自分は実の子ではないことが判明したと涙ながらに訴えるのだ。さっそくクリスタル家の系譜を探り始めたサムスンは、こころならずも名家の巨富をめぐる醜悪な争いに巻き込まれてゆく。暴力を憎む心優しき知性派探偵アルバート・サムスン、文庫初登場。改訳決定版。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
94
【探偵アルバート・サムスン】シリーズ第1弾。1971年のデビュー作品で、ロス・マクドナルドのスタイルの作風ではあるが、武器を持たずタフガイでもない思考型探偵ハードボイルド。ある日大富豪の娘が事務所を訪れ、血液型から自分は実の子ではないと解かったので、生物学上の父親を捜して欲しいと 依頼される。思考型と言っても普通の人であり、怖がったり億劫がったり、正義と打算の間で悩んだり、凄く人間味に溢れていて良い。ラストに意外な、しかも毒在る展開になる所など、宮部みゆき氏がお薦めなのも解る、結構な余韻も残る、範囲だ。 2020/02/17
hit4papa
67
ネオ・ハードボイルド作家の一翼を担うマイクル.Z.リューインのデビュー作にして、草食系探偵アルバート・サムスンの初登場作です。事件の依頼内容はいたって地味です。ページをめくる手が止められないといった類のストーリではないのです。捜査のために身分を詐称し不法侵入までしてしまうという大胆さと、びびったりくよくよしたりする繊細さの同居したサムスンの魅力を、本作品では味わえます。シリーズものの出だしとしては上々というべきなのでしょう。サムスンの男としての矜持には、ハードボイルドとしての系譜を見ることはできるかな。2019/10/11
佐々陽太朗(K.Tsubota)
59
どうして今日まで読んでいなかったのかと悔やむ。主人公アルバート・サムスンは女性に優しい紳士だ。酒もタバコもやらず、銃を持たない探偵。過去の記録を丹念にあたり、聞き取り調査を積み重ねるという真面目な探偵ぶり。たまに不法侵入を試みるのはご愛嬌。マッチョであろうと無理をすることなく、あくまで知的に調査をすすめる姿に好感。己の弱さや欲に負けることを潔しとせず、矜持を胸に気高く生きる姿にハードボイルドの原点を見る思いだ。死体を発見しないミステリ。グロテスクであったり、暴力的な場面が登場しないところにセンスを感じる。2012/08/18
しゃお
37
〈アルバート・サムスン〉シリーズ1作目。久し振りに何度目かの再読ですがやっぱり好きだなぁと再認識。酒も煙草もやらず、拳銃も持たない知性派探偵。慎重派かと思うと不法侵入も厭わない大胆さも。しかし忘れ物をしたり危機を感じると体が震えたりと臆病な面もあり、なんとも身近に感じる探偵。けれども探偵としての矜持は意固地の思えるほど強いところも魅力的。本当の両親を見付けて欲しいという依頼人である少女とのやり取りと微妙な距離感、そしてサムスンが彼女に見せる優しさ、胸の中で描く想いがなんとも言えない余韻を与えてくれます。2020/06/18
たまご
29
この,一人称なのにあえて暑苦しくない淡々とした感じと,やや客観的にとらえる視点と,そして懇切丁寧ではない,やや不親切な語り口が,ちょっと癖になるというか. 半ばであれ,もう会っちゃうの?と思ったあたりから,展開があちこちに行って,前半と後半とでは加速感が違うのに驚きました. 確かに影響された作品,多そうですね…2019/01/13