内容説明
不可解なのはポール卿の行動だけではなかった。前妻の事故死、母親を世話していた看護婦の自殺、家政婦の溺死…彼の周辺では過去に謎の怪死事件が続いていた。ふたたび捜査線上に浮かびあがってきたこれらの事件に、今回の事件を解決する鍵があるのか?それぞれに何かいわくありげなベロウン家の人々の複雑な人間関係から、ダルグリッシュ警視長が導きだした推理とは?緻密な構成が冴える、英国本格派渾身の力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
196
下巻は殺されたポール卿の抱えた 謎が徐々に明らかになる。 ダルグリッシュ警視長は ケイトとともに 真相を追うが.. ポール卿の周りの人間関係が複雑で 誰もが真犯人に思えるのは 著者の 意図通りなのだろう。英国の本格的な 推理小説だった。2017/05/13
ケイ
126
最後までドキドキして、胸が痛くなった。結局、心底からの悪人はおらず、皆が傷付いていて愛や安らぎを求めていたということだろうか。悪人は多いが、犯人はこの人しかいないと次第にわかる。それ以外の登場人物たちそれぞれの抱える問題が少々多すぎて、本来の焦点を少しぼかしているようなのが残念だ。英国教会を持つイギリスにおいて、その地域のカトリック教会と神父を登場させることに特別の意味はあったのだろうか。また、老年世代と若者の人生の捉え方の違いもまざまざと描いているが、それは少々意地悪ではないかと思った。2016/10/19
nakanaka
86
元国務大臣のベロウン卿と年老いた浮浪者という全く関係の無い二人が教会の一室で死んでいるというショッキングな出来事から物語りは始まります。怪しい人物が多いので犯人は一体誰なのかなかなかわからないのですが下巻の半分を過ぎた辺りで判明し、そこからがまた面白かったです。マシンガムとケイトの両警部の人物像もまた物語をより深いものにしているように感じます。特にケイトにとっては今回の事件は辛いものとなってしまいます。とにかく描写が緻密で読み応えがあります。とりあえずダルグリッシュシリーズは全て読んでみたいです。2017/04/06
セウテス
85
【ダルグリッシュ警視シリーズ】第7弾下巻。〔再読〕下巻に入り、犯罪の謎を解く事を通じて、人間の深層を明らかにしたいという意図が、益々ハッキリとしていると思う。更には、ヨーロッパ等のミステリに度々感じる事だが、宗教的な考え方や反対に信仰に対する迷いが随処に観られる。信仰とはなにか人間とはなにか、作者自身も考え続けている事なのだろうし、若者との世代のギャップに腹立たしさを覚えているのだろう事も伝わってくる。人の価値は今まで信じて来た理が崩壊した時に、いかに自分らしく生きられるのか、そんな問いかけが聴こえる。2021/03/25
NAO
71
格式のある名門の家にありがちな家族間のいざこざ、声をあげては言えないような確執。使用人に対する無意識の差別。職場における、旧態依然とした男女差別。なんともイギリス的なミステリだった。2019/12/11