ハヤカワ・ミステリ文庫
ウィチャリー家の女

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  • サイズ 文庫判/ページ数 410p
  • 商品コード 9784150705015
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

W-G

350
かなり久しぶりのロスマク。実は未読も多いがまずは一番のお気に入りから。蒼さの漂う文章と渇いた人物描写に二転三転する事件の様相が上手く絡んでいてテンポが良い。ひたすら関係者に話を聞いてまわるだけの構成が真骨頂なだけに、読んでいて苦痛な作品もロスマクにはいくつかあるが、ここら辺りの作品群はさすがの名作。とりわけこの作品は印象深い。根底に流れるアメリカ家族というテーマがソリッドに表現されているのと、脂ののった文章と威力のあるラストが渾然一体。大長編という訳でもないのにズッシリとした重さがある。2017/09/30

夜間飛行

204
大学生の娘がいなくなったという富豪がリュウ・アーチャーの前に現れる。旅行中とはいえ2カ月も娘の失踪に気づかず世間体ばかり気にする父。少々呆れるが、探偵は哀れな男の依頼を引き受ける。本作では探偵が語り手であり、読者は聞き上手なレポーターに同行しているかのように、様々な階層の人との対話に立ち合う。冷静かつ実際的な視点を共有しながら推理に参加し、自分の頭で考えられる作品だ。次第に明らかになる人間関係…その網の目に隠された欲や情を見極めるのが愉しい。高校時代、ロスマク好きの友人がいたが、彼は大人だったなあと思う。2022/03/27

セウテス

61
探偵リュウ・アーチャーシリーズ第10弾。〔再読〕行方不明になっている娘を、事を荒立てずに探しだして欲しいと、アーチャーは依頼される。派手なアクションや撃ち合いは無い、アーチャーは静かな観察者である。彼の語りと目を通して、読者はかなり綿密な人間描写を堪能できる。現代アメリカの抱える悲劇、家族の崩壊など的確に表現していると思う。ミステリとしての伏線やトリックがしっかり有って、本格派にも良いだろう。ラストの霧が晴れていく様な展開と、その後に残される何とも云えない余韻はたまらない。彼の残した言葉が、心に染みる。2017/07/27

藤月はな(灯れ松明の火)

41
一見、穏やかで円満に見える家族でも家に入れば、暴言や諍い、侮蔑などは起こり得る。血が繋がっているからこそ、簡単に切り離せないことへの苛立ちと自分の力のなさを知りながらも尚、世間から見てもいい親とは言えない親を思う気持ちに家族の諍いに対して諦めと「もう、嫌々、家族をやるならばさっさと別れればいいのに」と願った気持ちを思い出し、胸を抉られます。。親の諍いに耐えながらもどちらも憎めなかったために翻弄されて心身ともに傷ついたフィービが可哀そうです。2013/04/19

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

34
非常に恐ろしいのだが、感想を貼ろうと思ったら既読になっていた。いつ誰が先に読んだのだろう?(私だ)。せっかくなので感想をアップデートしておこう。出てくる人物みな何か隠していて、ピリピリしたり怒り狂ったり怯えたり、誰も捜査に協力しない中で苦戦する探偵アーチャー。探し出したウィチャリー家の女キャサリンはなぜ泣いてばかりいるのか。なぜみな見当違いのところばかり食いついてくるのか。最後に明かされる悲劇とは。本の帯の言葉は「熱く、生きろ」だが「卑しい街を行く」の方がぴったり。卑しさの果ての悲劇である。2021/02/06

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