内容説明
1982年、体制の崩壊を目前にしたソヴィエト連邦ロシア南部の森で、ナイフの傷跡も無残な少女の死体が発見された。それを皮切りに次次と森で子供たちが惨殺される事件が発生し、担当の捜査官ブラコフは、精神科医の協力を得つつ連続殺人犯を追う。そして1990年、ついに逮捕された男は、恐るべき事件の全貌を語り始めた…8年間に50人以上の少年少女の命を奪った異常殺人者の素顔に迫る、戦慄の犯罪心理ノンフィクション。
目次
森のなかの死体
捜査
ユーリー・カレニクの自白
反社会的性生活を送る女たち
殺人者の狂乱
同性愛者の弾圧
モスクワの死体
行き詰まり
浮上
罠
自白
殺人犯の横顔
裁判
著者等紹介
カレン,ロバート[カレン,ロバート][Cullen,Robert]
ニューズ・ウィーク誌のモスクワ支局長として、当時のソ連に10年にわたって滞在した経験を持つジャーナリスト。その活躍を認められ、1983年には海外記者クラブ賞を受賞している。その後、数多くの雑誌にロシア関係の記事を寄稿するとともに、謀略スリラー『クレムリン情報』、『策謀』、『ダ・ヴィンチの罠』など、自らの体験を生かした小説やノンフィクションを発表している
広瀬順弘[ヒロセマサヒロ]
1932年生、2007年没、青山学院大学英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
1980年代に起きた連続少年少女殺人事件についてのノンフィクション。立派に捜査を続けた警官たちに敬礼。以下ネタバレ含む。ようやく明かされた殺人の動機と、殺害の様子に思わず口をおさえた。性的に弱く勃起出来ないことで目の前にいる少女に八つ当たりし、まさに性行為のリズムで挿入するかのように刺したからたくさん傷があった。ナチ兵をパルチザンがしたように後ろ手に縛って少年をやはり何回も切りつけた。大人だと性的弱さを笑われると思って無意識にえらんだと思われる被害者たち。50人以上。ここまで酷いのは読んだことがない。2020/05/30
のっち♬
132
レソポロサ連続殺人事件の捜査ルポ。年間四百件に及ぶロストフ州の殺人、虚偽自白・性癖露呈による自殺・冤罪処刑等の犠牲、予断と偏見に満ちた性犯罪の認識、性的倒錯の温床と化した精神遅滞児施設、失業者や若者の生活など"公式見解"のためならどんな事実にも"反社会的"の烙印を押すソ連の旧態依然体質が克明に描かれる。相応にチカチーロを生み出し少年少女50人以上が殺されるまで暗躍させた"犠牲に慣れっこ"な社会像や捜査体制、科学の信頼性といった問題提起も訴求力を発揮。硬派でドライな筆致が重みを放つ犯罪心理ノンフィクション。2024/02/06
アッシュ姉
78
恐るべき連続猟奇殺人事件を追ったノンフィクション。いやはや長かった。最初の犯行から犯人逮捕まで八年、被害者の数は五十人以上という途方もない数字である。時代背景、社会情勢、捜査体制、生い立ちや境遇など、悪い要因がいくつも重なった結果、多くの犠牲者が出てしまった。何かひとつでも違っていれば、これほどの悲劇は起きなかったのではなかろうかと考えずにはいられない。最も衝撃を受けた海外小説『チャイルド44』と合わせてオススメしたい。2020/08/24
やいっち
73
犯人チカチーロの両親は、ウクライナ共和国の人。チカチーロが生れた1936年、スターリンによる大量殺人的農業政策が強行され、数百万人が殺された。飢饉になり食糧も収奪され、餓死多数。餓死者が隣人に喰われることも稀れではなかった。チカチーロの兄もその一人とか。 チカチーロは、生まれながらの肉体的障害などで、母親からは攻めさいなまれ、家族からも疎まれ、学校に友達が出来ず、性的欠陥ゆえ女性に嗤われ、戦争での血塗れの悲惨な負傷者を目の当たりにし……。2020/01/16
GAKU
59
1982年の捜査開始から逮捕される1990年の8年間に、ソビエト国内で50人以上少年少女を殺害した稀代の殺人鬼アンドレイ・チカチーロ。猟奇殺人、連続殺人事件のノンフィクションでは必ずと言ってよい程登場する人物。これはそれぞれの殺人事件の惨状から、8年間に渡る執念の捜査、逮捕後の彼の生い立ちから裁判までと、400ページ以上に及ぶ力作!とにかく殺し方が惨たらしい。そして何故8年間も殺し続けられたのか当時のソ連という国の状況や、逮捕後のチカチーロの独白、生い立ち、裁判等々冒頭から最後まで読ませてくれます。⇒ 2020/06/15