内容説明
ヴェトナム戦争の戦死者で、いまだ身元が確定できない一人の兵士。その彼が無名戦士に認定され、ヴェトナム戦争の戦没者の象徴として、アーリントン国立墓地に祀られることになった。そんな折り当の遺体を調査中だった国防総省の高官メレディスは、奇怪な事実に愕然としていた。遺体に残された弾丸と手榴弾の破片が、米軍のものだと判明したのだ。彼は味方に殺されたのか?だとすれば、その理由は?メレディスは独自に調査を進める。だが、手がかりとなる人物に黒い圧力がかかっていた…。情感豊かに絶妙のプロットで描く名手屈指の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
41
1984年5月28日アーリントン国立墓地にヴェトナム戦争無名戦士の葬儀が当時のレーガン大統領の弔辞の下、行われた。本書はこの史実に基づく無名戦士の身元を探る物語。しかもある疑惑を孕ませて。身元不明の戦士を名も無きままに葬り去ることはまだ還らぬ我が子、夫、父を待ち続ける遺族にとって無限の苦しみをもたらす。従って無名戦士の名を明らかにすることはすなわち兵士を一人の人間として尊厳を取り戻すことに繋がるのだが、戦争という狂宴ではそんな単純な答では解決できない真実が横たわっていることを作者は静かに示してくれた。2014/07/19
スー
20
90ベトナム戦争無名戦士の埋葬の直前にMIA事務局局長のウォルトはこの遺体が味方の銃弾と手榴弾を受けていた事が分かり独自に調査を始める。真相究明が楽しみですがもうひとつ読み所は第二次世界大戦は正義の戦いベトナム戦争は汚れた戦いというアメリカ人の中にある意識や戦場で起きる民間人を戦闘に巻き込む危険や兵士が受けるストレスでした。この無名兵士はなぜ殺されなければならなかったのか?身元が分からないように徹底的に遺体を損壊されてたのか?英雄か反逆者か?読み応えはあったけど最後がモヤモヤでした、しょうがないのかな?2021/07/25
Cinejazz
2
ヴェトナム戦争の無名戦士(身元不明の戦士者)を題材にした、ベテラン作家屈指の秀作。第二次大戦は正義のための戦い、ヴェトナム戦争は無益な汚れた戦いであったとするアメリカ人の心情が語られ、非道で残虐な戦場が、兵士に及ぼす精神への影響が如何に想像を絶する世界であるかを切々と語り紡いでいく。この作品はエンタテイメントを超越した、最後まで読者を捉えて離さないお薦めの絶品。2019/02/22