出版社内容情報
月と火星開発が進みながらWindows2021が発売されたばかりの夏紀の宇宙。そして登志夫の2021年では光量子コンピュータが異常を示す。
内容説明
月と火星開発が進みながらも、インターネットが実用化されたばかりの夏紀の宇宙。宇宙開発は発展途上だが、量子コンピュータの開発・運用が実現している登志夫の宇宙。別々の2021年を生きる二人には幼いころ「グラーフ・ツェッペリン号」を見たという不可解な記憶があった。二人の日常にかすかな違和感が生じるなか、開通したばかりの電子メールで自分宛てのメールを送っていた夏紀のもとへ思いがけない返信が届き―。
著者等紹介
高野史緒[タカノフミオ]
1966年茨城県生まれ。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1995年、第6回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作の『ムジカ・マキーナ』(ハヤカワ文庫JA)で作家デビュー。2012年、ドストエフスキーの名作の続篇という体裁の幻想ミステリ『カラマーゾフの妹』で第58回江戸川乱歩賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナミのママ
74
『SFが読みたい!2024年版』国内編の第1位作品。主人公は土浦に住む高校生の夏紀。彼女の高校生活が綴られるが少しずつおかしい。読者の受け取る不思議さは作中の夏紀の言葉になるので入り込みやすい。もう1人の主人公、登志夫の章になり2人がパラレルワールドに住んでいると気がつく。共通項は幼い頃に「グラーフ・ツェッペリン号」を見たこと。メールで2人がつながったあと、この話はどこへ進んでいくのだろうとページをめくると…。あまり手にしないSF作品だけれどちょっと癖になりそうな読後感。2024/02/25
塩崎ツトム
53
「記憶違い」が「マンデラ効果」になり、いつしか「こうだったはずなのに!」という被害妄想的陰謀論になる昨今だけど、それはともかく、この記憶違いが、なんというか、「わたしらしさ」というものの根幹にあるんじゃないか?「アイデンティティー」ではなくて、あくまでも「わたしらしさ」。わたしはこのことを覚えている。本当に? インターネットが過去の記録を永遠に残し続けたことと、「マンデラ効果」が人口に膾炙されたこと、量子コンピュータの実用化、これらはなにか、とてつもない、魔術的因果関係があるんじゃなかろうか?2023/08/01
小太郎
52
表紙のイラストと題名で購入→積読本に。24年度「SFが読みたい」でなんと国内トップの快挙!高野先生おめでとうございます。最初はラノベ風の飛行船を絡めた夏のボーイミーツガール小説だと思って読んでいたら、そこは一筋縄ではいかない高野SF。こちらの予想を超えて量子力学、歴史改変、時間問題、マルチバースと言う魅力的なガジェット総ぶっこみのワンダーランドになっていて成程これなら!という秀作になってました。ラストを含めて一編の切ない青春小説になっているところも読ませます。後書きで作者の近況が知れて感慨深いです。★42024/02/21
よっち
43
幼い頃にグラーフ・ツェッペリン号を見た不可解な記憶を持つ、それぞれ並行世界の2021年を生きる夏紀と登志夫。そんな二人の世界が繋がるSF青春小説。月と火星開発が進みながらも、インターネットが実用化されたばかりの夏紀の世界。一方、宇宙開発は発展途上だが、量子コンピュータの開発・運用が実現している登志夫の世界。それぞれの視点で進む物語が、だんだんと二つの世界が絡み合ってゆく展開で、そんな中で育まれてゆく確かな二人の絆を感じる一方で、意外な答えが提示された結末は思いのほかあっけらかんとしていたのが印象的でした。2024/01/04
b☆h
38
ダヴィンチで紹介されていた一冊。登志夫と夏紀が生きる2021年。近代の話のはずなのにどこかおかしい…。その違和感は読み進めるごとに大きくなっていく。並行世界にメタバースや量子学の話も絡んできて、正直完全には理解出来なかった…。でも、小さな違いが大きな変化を産むってことなのかな?なんて自分なりに理由をつけながら読了。やっぱりSFものを完全に理解するのは難しい…。2024/08/22