出版社内容情報
陸地がほぼ沈んだ25世紀。海に生きる海上民と
〈魚舟〉や〈獣舟〉の美しくも激しい生きざま
を叙情的に描いた、待望の全作書き下ろし4篇
内容説明
陸地の大半が水没した25世紀。生物船“魚舟”を駆る海上民と陸上政府は、海上都市への移住権をめぐり対立していた。一触即発の危機迫るなか海上都市の保安員と海上民の長の交歓を描く中篇「カレイドスコープ・キッス」、己の生まれた船団を探し続ける“魚舟”の心身の変容を追う表題作ほか、海に暮らすものたちの美しくも激しい生きざまを叙情的に紡ぐ、全篇書き下ろしの“オーシャンクロニクル・シリーズ”中短篇4作。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。2010年刊行の長篇『華竜の宮』は、雄大なスケールの黙示録的海洋SF巨篇として書評家、読者から支持され、「ベストSF2010国内篇」にて第1位を獲得、第32回日本SF大賞も受賞した。2016年刊行の『夢みる葦笛』で「ベストSF2016国内篇」第1位を再び獲得。2018年、『破滅の王』が第159回直木賞候補となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
156
作者が織り成す壮大な地球興亡記「オーシャンクロニクル」新作をずっとずっと待ち焦がれていた。人類が決して避けることのできない大厄災「プルームの冬」今作は「海上民」にスポットが当てられた短編集。必ずやってくる「そのとき」を見据えて、自暴自棄にならずに己の在りかたを選びとる。その凛とした佇まい。力強く、美しく。2022/03/08
モルク
94
「華竜の宮」「深紅の碑文」から繋がるオーシャンクロニクルシリーズの短編3話と中編1話。いずれも海面上昇により世界のほとんどが海に覆われた中で海での生活に適応するために遺伝子操作を受けた海上民の物語。どの作品も圧倒されるが中でも「老人と人魚」がお気にいり。もしかしてこの主人公はザフィール?彼の数奇な人生を最期には海に帰ることでしめる…あぁ、この世界観にしばし浸かりたい。やっぱり好きな作品だ。2025/05/31
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
81
オーシャン・クロニクルシリーズのスピンオフ的な中短編集。遥か未来海面が上昇し、やがて地球を滅ぼすほどの「大異変」が起こるとされている世界。前作「華竜の宮」や「深紅の碑文」のような圧倒的なスケール感は無いが、このシリーズ独特の世界観は現在だ。元は同じ人類だった陸上民と海上民、生き残る為には時には非情な対応も必要とは思うが、やるせない。この本だけでも楽しめるがやはり「魚舟・獣舟」から読む方がもっと楽しめると思います。★★★+2022/09/10
さつき
73
オーシャンクロニクル・シリーズの中短編集。久しぶりにこの世界に触れ楽しかったです。〈朋〉を持てずにいる海上民の切なさを描く「迷舟」と獣舟誕生の様を描く「獣たちの海」はとても短い作品なのに印象的。「老人と人魚」は胸をぐさりと突かれた気分。自分の終わりを自分で決められるのは幸せなことなんだろうな。「カレイドスコープ・キッス」からは若さの眩しさを感じ、前作から続いた様々な人々の努力が一つの実りをもたらしたように思えました。2022/04/15
夜長月🌙@読書会10周年
69
オーシャンクロニクル・シリーズ、盛り上がって来ました。「老人と人魚」ではあの人のその後が。波瀾万丈の活躍は読んでましたがこういう事になるとは。静謐な作品です。そして「カレイドスコープ・キッス」ではAIの相棒が愛おしい。シリーズものならではの大きな流れとスピンオフ的な小話が楽しい一冊でした。他2編。2023/03/05