出版社内容情報
新興団地「緋沼サテライト」で起こる殺人事件。目撃された学帽と白い開襟シャツの少年は欲望と邪悪の怪物か。異形のミステリ長篇
内容説明
1999年初夏、親友が重症を負わされ恋人は行方不明となった大学生・崇は、犯人は都市伝説「トレチア」がという確信を深めていく。かれらが暮らす「緋沼サテライト」を蝕む地盤沈下、不穏な景色をフィルムに収め続ける女、新たなトレチアを自任する小学生…やがて訪れる大崩落は計画団地の底を割り、住民と読者を神話世界の深淵へと導く。悪いのは誰?超写実の手法に貫かれた異形のミステリ大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
森オサム
51
大作。奇想、幻想、夢想にエログロ。破壊、暴力の因果応報。音楽、映像、漫画等芸術の力。友情、家族愛もほんの少々…。物語を通した主人公がいない群像劇は、そのテーマが良く分からない程あちらこちらへ飛びまくる。トレチアかマカラ、どちらかに絞ってサスペンスか幻想小説にしてくれれば、もっと読み易くて楽しめたと思う。ホントに、いくつかの短編を基に、泥沼の上に手に負えない長編を積み上げた様な作品に感じた。ただ、作者の情念は伝わる。正直このタイプの小説がバカ売れして大金を生むとは考え辛い。でも書かずに居られないんだろうね。2021/01/13
冬見
14
恐ろしくて、気味が悪くて、吸い込まれるように一気に読んでしまった。物語の深い泥濘に足を取られ、引きずりこまれる。あるいは物語が現実世界を侵しているのか。いずれにせよ、読んでいるうちにどんどん現実との境界が曖昧になってゆく。これはほかの津原泰水の作品にも言えることだが。水をたっぷりと含んだ沼の上に築き上げられた都市。都市を漂う巨大な怪魚と伝承される謎の少年のイメージは世界を徐々に歪ませてゆき、やがて破滅をもたらした。本を閉じると頭は白い靄がかかったようだった。夜の暗闇を、そこに潜むなにかをわたしは思い出す。2021/02/08
miroku
12
めくるめく読後感2020/10/14
ソラ
11
雰囲気は良かったんだけれど個人的にはもやっと終わった感じが…。2020/06/13
ふくしんづけ
10
〝緋沼サテライト〟で多発する殺人及び暴行・失踪事件、その背後で子どもたちのあいだに語られる〝犯人〟トレチア、都市の水底に時折垣間見える巨大な怪魚。そんな個々の要素が非常に魅力的なのだが、残念ながら好きじゃない。作者の端正な、ひねていると感じさせるほどの文章も、今回は物語をストレートなホラー展開に導かず煮え切らない感じ。この作家に限っては、長編ではライトな作風の方が好きかもしれず、初期作で比較的好きだったのは『妖都』くらい。〈サテライトって大きなお魚の夢なの〉の部分が一番惹かれる。2021/12/08