出版社内容情報
札幌の研究所に就職した青年は、有機素子コンピュータの中に一つの世界を構築する――3月新刊『プラネタリウムの外側』前日譚。
早瀬 耕[ハヤセ コウ]
著・文・その他
内容説明
東京の大学院で修士課程を終えたぼくは、就職のため、恋人の由美子とともに札幌の街を訪れた。勤務先の知能工学研究所は、グリフォンの石像が見守る深い森の中にあり、グリフォンズ・ガーデンと呼ばれていた。やがてぼくは、存在を公表されていないバイオ・コンピュータIDA‐10の中に、ひとつの世界を構築するのだが…1992年のデビュー作にして、『プラネタリウムの外側』の前日譚、大幅改稿のうえ26年ぶりに文庫化。
著者等紹介
早瀬耕[ハヤセコウ]
1967年東京生まれ。1992年、『グリフォンズ・ガーデン』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
125
この作者の作品は「未必のマクベス」を読んで楽しめたので他の作品も読もうと思いましたがまだ4作しか出ていないのですね。その中でこの作品が20年以上も前に書かれたということのようです。内容としては男女の恋愛関係が中心を流れているのですがこの書かれた当時にデュアルワールド的な考え方で書かれたとは大したものです。未読の2作も読むつもりです。2021/01/07
buchipanda3
113
「プラネタリウムの外側」の前日譚となる小説。札幌の研究所に就職した男性が主人公の認知科学を題材とした話だけれど、中身の本筋は哲学的な面ではないかと思った。研究者である恋人同士のフランクで洗練された議論が興味深い。自分の主観のみで世界が完結しているという奇妙なメタファ、他者は自分の意識にある幻想ではないかという哲学めいた問い。見ていない部分て実は何も無い?とか。そんな概念を、特定の情報のみで構成された仮想世界を用いた思考実験のような小説に落とし込んだ着想が面白い。最後のSF的な収束も好み。2020/03/05
南雲吾朗
84
早瀬氏が26年前に書いたデビュー作。「プラネタリウムの外側」の前日譚。甘い恋愛小説のような文章に惑わされそうになるが、実はその内容にはデカルトやその他の哲学的要因、事細かな物理の法則を踏まえた世界の捉え方が潜んでいる。書き上げるまでに莫大な情報を考察した事が伺える。もしかしたら、プラネタリウムの外側よりも深い考察と塾考された時間が掛かっているのかもしれないと思わせるような内容である。A.I.を創り出すには世界のとらえ方哲学的要素を含んだプログラムが必要なのだなぁっと考えさせられる。凄く面白かった。2018/05/01
のいじぃ
78
読了。22年前の作品。自身の工学、理学の知識が乏しく、専門的なことはざっくりと。残るは哲学の部分。自分を構成している世界、と自分が構成した世界の境界線に囚われていく彼の物語。彼女、音、色、匂い、記憶、誰もが思春期の頃に考えるかもしれない「自分の存在証明」。遺伝子情報と細胞の集まりの果てにある微弱な電気信号による脳の「思考」。他作者による「藁の中の微生物によって発生した電気によって意思を持ったカカシ」思考の沼にはまっていく。一点、合わせ鏡は理論上では点なのかもしれないけれど、追う事が出来ればやはり「無限」。2018/12/15
とくけんちょ
67
この空気感が好み。現実世界と想像世界が並行して流れていく。両者で異なる恋人との生活。単なる妄想にとどまることなく、すごく透明感がある。なんだか小難しい会話が続くところはあるが、何故か耳障りがいい。登場人物がドロドロしてないのが魅力なのかな。全体が透き通ったガラスみたい。各章の最後のタイトルみたいなものに驚きがあって、結末もしっかりしている。2021/08/15
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