出版社内容情報
長野県松本で暮らす作家のぼくは、連絡がとれない父・伊郷由史の安否を確認するため、新潟の実家へと戻った。生後三カ月で亡くなった双子の兄とぼくに、それぞれ〈文〉〈工〉と書いて同じタクミと読ませる名付けをした父。だが、実家で父の不在を確認したぼくは、タクミを名乗る自分そっくりな男の訪問を受ける。彼は育ての親を殺して死刑になってから、ここへ来たというのだが……。
神林 長平[カンバヤシ チョウヘイ]
著・文・その他
内容説明
長野県の松本で暮らす作家のぼくは、連絡がとれない父・伊郷由史の安否を確認するため、新潟の実家へと戻った。生後3ヶ月で亡くなった双子の兄とぼくに、それぞれ“文”“工”と書いて同じタクミと読ませる名付けをした父。だが、実家で父の不在を確認したぼくは、タクミを名乗る自分そっくりな男の訪問を受ける。彼は育ての親を殺して死刑になってから、ここへ来たというのだが…著者の作家生活における最大の野心作。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック 戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞。1995年、『言壺』で第16回日本SF大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マリリン
24
初読み作家作品だが何故手にしたか記憶が不明。面白い作品だった。死刑囚邨江の刑が執行されるまでの場面から物語は始まるが、邨江は死んでいなかったのか。登場人物は少ないがドッペンベルガーなのかクローンなのか解離なのか、それとも憑依なのか。誰が誰なのか交錯し...本を閉じても眩暈がした。教誨師という存在を初めて知った。教誨師と邨江?タクミ?とのやり取りは哲学・宗教等色々な要素を含んでいて、一番惹きつけられた。人間の魂や意識、死刑制度についても深く考えさせられた。SFなのかと思うが違ったジャンルにも思えた作品。2018/12/14
ソラ
23
中盤以降から一気に加速していく感じで、最後は若干すっと寒気を感じた。とはいえきちんと理解はできてはいないけれど、とても入り込まされた作品でした。2018/06/02
そふぃあ
22
神林さん意識についてずっと考えてるよね?もう哲学書の域だよ。これが思弁小説ならツァラトゥストラも思弁小説だよ。ずっと書いてるテーマがぶれなくて凄いと思う。俺はこれを書きたいんだって気迫がある。私は、 ・意識=3次元に縛られないもの。 ・身体=有機機械。意識の生成装置且つ総体に収束させるための演算分子。 ・総体=意識の行き着く先。 宇宙と人間と意識の総体はウロボロスみたいな円環構造で、この世界はシミュレーションみたいなものだと考えてて、本書と通じるものがあった。2018/08/27
なしかれー
12
意識の話。役割の話。世界の話。死の話。意識というのは、他者がいてこそのものだということ、ハードは問わないのだということ。そう思ったら途端に不安になる。2018/10/07
niz001
8
視点の変更によるものか、途中まで酩酊感を感じながら混乱しつつ読む。教誨師を訪ねる辺りから一気に面白くなり、読み終わってみれば『ああ、やっぱり神林長平さんやった』と。2018/05/08