内容説明
現代日本SF第一世代作家6人の傑作選を日下三蔵の編集により刊行するシリーズ。第3弾はアイデアSFの名手、眉村卓。SFコンテスト佳作のデビュー作「下級アイデアマン」、醜い宇宙人をめぐり美醜の基準を問う「わがパキーネ」ほか“異種生命SF”13篇を第一部に、人間とそっくりなロボットが共存する社会の陥穽「準B級市民」、ジュヴナイル中篇「産業士官候補生」ほか、組織と個人の相克を描く“インサイダーSF”9篇を第二部に収録する初期傑作選。
著者等紹介
眉村卓[マユムラタク]
1934年、大阪府生まれ。本名・村上卓児。大阪大学経済学部卒。大阪窯業耐火煉瓦に勤める傍ら、SF同人誌「宇宙塵」に参加。61年、同誌に発表したショート・ショート5篇が「ヒッチコック・マガジン日本版」に転載されてデビュー。61年の「SFマガシン」第1回コンテストに投じた「下級アイデアマン」が佳作第二席となる。63年の第一長篇『燃える傾斜』の刊行を機にコピーライターに転じ、65年から作家専業。本格SFからショートショート、少年ものまで、幅広い作品を発表。79年、「司祭官」シリーズの長篇『消滅の光輪』で第7回泉鏡花文学賞、87年、『夕焼けの回転木馬』で第7回日本文芸大賞を、それぞれ受賞
日下三蔵[クサカサンゾウ]
ミステリ・SF評論家、フリー編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
55
傑作選第3集。今回は眉村卓。眉村の小説はジュブナイルとして中学生向け雑誌で(兄の学年分、自分の学年分)でよく読んでいた。そのうちの幾つかは映画化もされたが、本選集はジュブナイル小説をできるだけ避けたようで、全体のテイストは悲観的なベクトルを持つように思う。SFは明るい未来と同時に、人類が問題を乗り越えられないなら暗鬱たる未来も想像していたのだと改めて考えさせられた。それでも昭和40年頃に描かれた小説には、虚無的な未来像に科学と人類への信頼、それ故に鳴らすべきだと考えられた警鐘が詰まっているように思える。2022/01/30
ぐうぐう
32
日本SF第一世代の作家の作品を編集・刊行するシリーズ『日本SF傑作選』。3巻は眉村卓だ。眉村卓と言えば、ある世代には『なぞの転校生』や『ねらわれた学園』がまず思い浮かぶだろうジュブナイルSFとしての作家であり、最近の読者にとってはカズレーザーにより紹介された『妻に捧げた1778話』のショートショート作家としてのイメージが強いはずだ。けれど、SFというジャンルの中で眉村卓が特異な存在であるのは、インサイダーSFを提唱したことにある。(つづく)2018/01/12
geshi
25
人間と人間(または異星人・機械)との分かり合えなさを描く作品が多く、突き放すのか・それでも踏み込めるのかがテーマとなっている。SF的アイデアが外側にではなく内側へ向いているのがインサイダーSFというやつか。『正接曲線』人類を模倣し急速に文明を深化させるポグ人を通して人類を冷徹に見据える。『準B級市民』被支配階級が軛を逃れるまでを主人公と共に体験するSFを使った差別の物語。『契約締結命令』以降の4作は巨大な社会の力の前になす術のない人間を放り出すような寂しさ。それでも残る人間らしさが頼もしい。2018/10/10
かわうそ
23
初期作品群とのことで著者ご自身はあまり肯定的にとらえられていない部分もあるようなのですが、懐かしい雰囲気に古びないアイデアは今読んでも非常に面白かった。お気に入りは「準B級市民」「虹は消えた」「わがパキーネ」あたり。2018/04/08
ぜんこう
17
眉村卓さんは今まではショートショートやジュブナイルものを少し読んだだけでした。 どの話も読みやすいけど、人類や体制、文明などへの批判も感じられるし、他の生命、生物やロボットや機械に対する愛も感じられる。 読みやすかったけど(このシリーズみんなそうやけど)700ページ超は疲れました(^^;)2018/04/07