出版社内容情報
大阪府南部を走る阪堺電車。昭和8年から平成29年までを舞台に、電車で働く人々、沿線住人が遭遇した事件を鮮やかに描く、連作ミステリ
内容説明
大阪南部を走る路面電車、通称・阪堺電車。なかでも現役最古のモ161形177号は、大阪の街を85年間見つめつづけてきた―戦時下に運転士と乗客として出会ったふたりの女性の数奇な運命、バブル期に地上げ屋からたこ焼き店を守るべく分闘するキャバクラ嬢たち、撮り鉄の大学生vsパパラッチvs第三の男の奇妙な対決…昭和8年から平成29年の現代まで、阪堺電車で働く人々、沿線住人が遭遇した事件を鮮やかに描く連作短篇集。
著者等紹介
山本巧次[ヤマモトコウジ]
1960年、和歌山県生まれ。中央大学法学部卒。現在は鉄道会社勤務。2015年、第13回「このミステリーがすごい!」大賞隠し玉となった『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
230
これは表紙とタイトルに惹かれて、手に取ったんですが、いい掘り出し物でした。語り手は、この阪堺電車の177号電車。85年も走り続けたんですね。見事に昭和8年から平成29年まで、阪堺電車の運転士一家を中心に、177号電車を通じて、人との縁がつながり、ドラマがあり時を経ても見事でしたね。阪堺電車が走る界隈に住んでなくても、この町に住んで、阪堺電車に何度も乗ってるような気持ちになりました。微笑ましくもあり、心地よい物語で面白かったです。2020/07/02
へくとぱすかる
149
モ161形は1928年製造以来、90年を経た今も現役。177号車とともに歩む様々な人生を、電車自身が(!)回顧する。戦前の大大阪時代から戦争、万博から平成まで。軽いミステリタッチと思わせて、実はトリックは充実。私のお気に入りは第3章(昭和34年)でした。最後はどうなるのかと思ったが、もし電車に人格があれば、よろこんで迎える第2の人生だろう。(「電生」かなぁ)。人々が世代を経てもつながっていくところが、近過去の歴史の妙。2019/09/28
ショースケ
127
天王寺から発車する大阪と堺を結ぶ阪堺電車。85年も走った177号の物語。私は天王寺が近いので住吉大社に初詣でに行く時などはよく乗ります。ゆえにとても身近な話しで楽しめた。路面電車独特のゆったりとした時間。 戦時中は女性運転士がいたことなど知らないことも多かった。 この路線電車での人々のひきこもごもの物語がつヅラれ、引き込まれた。最後の177号が飾られたところはウルっときたなぁ…みんなに愛された電車。心配しないで、今も阪堺電車は元気よく天王寺、阿倍野界隈の車の横を走り抜けています! 2020/09/30
hiro
110
読メでこの本を知り読んでみた。阪堺電車に乗る機会は滅多にないが、南海沿線に住んでいたときには、よく見かけた馴染みの電車だった。その阪堺電車のモ161形177号車(モ161形は176号までで177号車は実在しないようだ)がみた、運転手、車掌、乗客らにかかわりのあった戦前、戦中、戦後、万博の年、バブル末期、平成の沿線の事件を描いた連作短編集。作者は現役の鉄道マンだということで、鉄道に対する愛情が感じられたし、戦前から平成までの大阪の下町の雰囲気がよく現れていて、六編のつながりにも無理がなく、楽しく読めた。2018/04/07
ぶち
92
大坂南部を走る現役最古の路面電車は、昭和3年から現在まで現役であり続けています。戦争直前の頃、戦時中、高度成長時代、オイルショック、バブルの崩壊、鉄道写真ブームなどなど....阪堺電車の職員さんや沿線の人々が遭遇した事件の導入部を、路面電車が自らの口で語っています。それぞれの事件の詳細は、人情味溢れる物語で面白く、軽いミステリを楽しむような読書です。エピローグでは、ほろりとさせられました。 いろんな街で見られた路面電車がたくさん消えてしまったのが残念でなりません。2018/10/25
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- 洋書
- JOSEPH CSAKY