出版社内容情報
物理的に実行不可能な密室殺人に、時空を超える論理で挑む表題作など奇想ミステリ7篇
内容説明
核シェルターにひとり篭った男の胴体が捻り切られていた怪事、柩の中で数十カ所刺されて発見された男…。あまりにも完璧すぎる密室殺人は、本当に実行可能か!?「不可能犯罪など存在しない」と豪語する“超限探偵Σ”の華麗なる活躍を描く「見晴らしのいい密室」ほか、電子仕掛けの謎を秘めた本格ミステリ「探偵助手」などこれまで誰も見たことも聞いたこともない、精緻で巧妙な論理遊戯が導き出す唖然呆然の結末7篇。
著者等紹介
小林泰三[コバヤシヤスミ]
1962年京都府生まれ。大阪大学基礎工学部卒。同大学院基礎工学研究科修了。1995年、「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞して作家デビュー。2001年発表の『AΩ』、2002年発表の短篇集『海を見る人』(ハヤカワ文庫JA)で、日本SF大賞に連続ノミネート。2011年発表の『天獄と地国』(ハヤカワ文庫JA)で、第43回星雲賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
84
〔再読〕『目を擦る女』から、一部を再構成した7作の短編集。SFであるのだが「世にも奇妙な物語」的な、小林泰三氏の独特な世界という感想が強い。今表題作品と前表題作品は、論理的に考えていくと思わぬ結末にたどり着く、そんな代表例の様な物語。予測するなど無謀な事で、素直に思い描いていた物語の世界観とは、全く違う場所へ落ち着く事を驚き楽しんだ。「探偵助手」は、挿し絵としてQRコードの絵が各ページに在るが、実際に読み込めるのに驚くと共に登場人物の心情が解るのが楽しい。どの作品も、真面目な論理なのに苦笑いとなる面白さ。2021/02/13
ましゃ
39
「高度に発達した論理のアクロバットは、グロテスクな悪夢と見分けがつかない。」(ミステリ作家 法月綸太郎)帯文より。確かに…どの短編も自分の常識、世界を疑いたくなる。タイトルはミステリーっぽいですけど内容はガチのSFであり、ロジック(作品の構造)とアトモスフィア(作品の雰囲気)の乖離を描いた作品集です。『予め決定されている明日』「問題が作られた時、答えはすでに存在している。世界が作られたなら、すでにその未来は存在しているのだ。」これって怖くないですか?中々頭を使う内容ですのでゆっくり読める時に読みましょう。2019/04/24
うさみみ
32
『目を擦る女』収録済の4編と新規3編の構成。既読分は読み流すつもりが面白くて全編じっくり読むことに。感想は新規分を。「探偵助手」結末の分かりやすいミステリ。QRコードというギミックを小説に使う斬新さに小躍り。「忘却の侵略」傑作。『記憶破断者』を思わせるチート能力持ちの怪物とのバトルは主人公の不可解な行動で加速し量子力学的に収束する。恋物語が微笑ましい。「囚人の両刀論法」これも良かった!宇宙舞台の直球SFに社会構造論や脳の損傷、意識の連続性とデータ化など後に作品として結実する要素も。意外性と絶妙な後味。2019/03/02
hanchyan@つまりはそういうことだ
27
この題名この装丁でSFて(笑)。読み進めておやっ?と思ったが、とても面白かった。なんだかんだで小林氏好きなんじゃん自分!今んとこつまんなかったって思ったのナシ。既読はミステリ寄りの作品ばかりだが、解説によれば“サイエンス・ホラー”って言うんですか、本作ではちゃんとゾゾっ!とさせてくれる小林氏の手腕を追認。理屈っぽいヘンなはなしは読んでて楽しいっすよやっぱ!(笑)って感じの「忘却の侵略」「囚人の両刀論法」。ベストは「未公開実験」、笑えて縦横ぴったり平仄合って、オチも綺麗。SF短編のお手本を見るよう。2014/11/12
のっぱらー
26
過去に既読の『目を擦る女』の再構成版ということを後から知ったけど、ほとんど覚えてなかったので、ほぼ初読み感覚でした。QRコードを本編中に挟む実験的な作品とかもあり、ミステリ好き、SF好きともに楽しめる作品ですね。2016/07/08