出版社内容情報
滅亡を前に、人類はどう生きるべきか?ベストSF2010第1位、日本SF大賞受賞新世代日本SFの金字塔、ついに文庫化地殻変動で陸地がほぼ水没しても人類は武器を捨てなかった。さらなる絶望的な環境激変は、この星のすべての命に対して決断を迫る
内容説明
ホットプルームによる海底隆起で多くの陸地が水没した25世紀。人類は未曾有の危機を辛くも乗り越えた。陸上民は僅かな土地と海上都市で高度な情報社会を維持し、海上民は“魚舟”と呼ばれる生物船を駆り生活する。青澄誠司は日本の外交官として様々な組織と共存のため交渉を重ねてきたが、この星が近い将来再度もたらす過酷な試練は、彼の理念とあらゆる生命の運命を根底から脅かす―。日本SF大賞受賞作、堂々文庫化。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県生まれ。『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、同作でデビュー。2010年にハヤカワSFシリーズJコレクションから刊行した長篇『華竜の宮』は、雄大なスケールの黙示録的海洋SF巨篇として書評家、読者から支持され、「ベストSF2010国内篇」にて他を圧倒して第1位を獲得、第32回日本SF大賞も受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
99
エコノミストは未来予測でヘマをし、野球評論家に至っては半年先の優勝チームも予想できない。一方、文学者は、正確に未来を言い当てている。小惑星イトカワを往復したハヤブサプロジェクトの中心は宇宙戦艦ヤマト世代。ロシアの宇宙開発を牽引した世代はベルヌの著作に感化されていた。この作者の描く未来は、大規模海面上昇により多くの陸地が水没した25世紀。人類は種の保存を優先させ、一切の倫理規定を排除し、バイオテクノロジーに集中。自らを環境に適応させる道を選んだ。ところが、さらなる大変動が、人類に滅亡か変化かの決断を迫る。2017/01/28
けい
96
プロローグで語られる緻密な背景。ここから始まるのかと思ったら、もう一段進んだ世界がスタート地点。地球環境に合わせて進んでいく分野、置き去りにされて行く分野の対比が非常に良くて、それが伏線ともなって新たな展開へ。人の本質は何も変わらず繰り返される権力闘争とエゴ、そして差別。そんな人類へ、更なる課題を突き付ける地球。人類の生き残る道はあるのか?と言った所で下巻へ。2014/05/28
おかむー
77
らしいSFをと手にとってみたら、思ってたメカメカしいのとはちょっと違った。『もうすこしです』。現代の日本から始まる物語だったので「日本沈没的な方向か?」と思ったら、そこから数ページで地球規模で文明がひっくり返るダイナミックな展開にいい意味でやられた。大半の陸地が水没した世界で残った地上に生きる陸上民と、遺伝子操作で洋上生活に適応した海上民、海上民から「生まれる」魚舟と獣舟、国家に替わる陸上民の連合。独自の世界観に慣れてきたと思った終盤で明かされる人類滅亡への秒読みにどう立ち向かうのか、下巻に期待ですね。2014/04/10
k5
74
歴史ものばかりだったので、突発的にSFが読みたくなって。様変わりした地球で、地上民と海上民に人類が分かれた世界。ファンタジーっぽさもあり、イメージ豊かな傑作だと思います。導入部分、ちょっと説明が多すぎたような気もしましたが、話に入ってからはサクサク。勢いつけて下巻へ。2021/06/20
ハサウェイ
74
近未来の地球では大きな地殻変動により海面が大きく上昇し生活環境が大きく変わる。人々は残された小さな陸地の陸の民と大海原に適応進化した海の民とに分かれる。初めて読む作者さんでしたが、SF感がより良く出て、ファンタジーも含まれる。しかし、それ以外にも緻密な時代設定と専門的な地質や異常気象などの設定が凄すぎる。良く読めば、本当に起きても不思議ではないと思わせる内容。上巻は時代設定と主な登場人物の紹介に近かったが、下巻で、この登場人物達がどの様に絡み合うか楽しみ。2017/02/14
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