内容説明
ギャングの世代間抗争に端を発した拷問殺人の背後には、闇の軍属カトル・カールの存在があった。ボイルドらの熾烈な戦いと捜査により保護拘束された女、ナタリアの証言が明らかにしたのは、労組対立を利用して権力拡大を狙うオクトーバー一族の影だった。ついに牙を剥いた都市システムによって、次々と命を落としていく09メンバーたち。そしてボイルドもまた、大いなる虚無へと加速しつつあった―暗黒と失墜の完結篇。
著者等紹介
冲方丁[ウブカタトウ]
1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』でスニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞受賞。マンガ原作やアニメ脚本も手がけ、ジャンルを越境して活躍。2009年、初めての時代小説『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ずっきん
73
うぅぅ(泣いてます)面白かったよ!二人の決別を読みたい!いや、読みたくない!の激しいせめぎ合いの中で、あっという間のグラウンドゼロ到着。わたしのライフはとっくのとうにゼロである。だが、著者は予想をかわして物語を決着させるのだ。あああ。SFの体を成しているけれど、縦横に隙なく織られた極太クライムミステリのよう。語りはスタイリッシュ。エルロイとアメコミはともかくヴァクスに影響を受けたと知って納得。そりゃあ、ツボど真ん中なはずだ。ナタリアのあの台詞ったら。ウフコックを失ったあんたの代わりに、わたしが泣いてやる!2021/02/10
明智紫苑
38
『アノニマス』を読むまでの復習としての再読。『スクランブル』の時点ですでに「男の業」を描いているが、この『ヴェロシティ』は主人公が成人男性だけあって、さらに深く恐ろしい。この凄まじさ、冲方氏がパニック状態になって失踪(疾走)したのも納得出来るな。あまり具体的に説明するとネタバレになるのだが、ある場面は蘇秦の復讐を、そして最後は呉起の復讐を連想させる。そういえば、塚本靑史氏の白起の名前は呉起に由来するという設定だったね。2016/03/28
geshi
25
クリストファーの喪失から一挙に力を失っていく09メンバー達とカトル・カールの死闘。クランチ文体だからこその時間にしては短くても濃密な場面に魅入られる。次々と明かされる衝撃の真実の釣瓶打ちで、SFでもバトルものでもなく、実はこれはハードボイルドだったのかと認識した。ボイルド求め続けた有用性の答えが、虚無の力だという事がやるせなく、ウフコックの拒絶も、ナタリアの遺した言葉も、最後に果された復讐も、あまりにも悲しい。2015/04/09
キーツ(Nob Arakawa)
17
これだけ熱量ある作品を読むのは読み手側もけっこう消耗するのだけれど書き手の消耗度合いはもはや想像も付かぬ世界であろうかと危惧してしまうほどの熱い作品であった。現代に於いてはこういう姿勢を見せない作家が増えただけなのかもしれないが、平井和正などは命削って書いてることを隠しもしなかったもんだが実際はどうなのであろうなぁ。読者としてはありがたく読ませていただくことと著作物を買い支えることくらいしか出来ぬのがもどかしい作品に出会えるのも本の虫を止められない理由の一つでもあるのよな。嗚呼白い秋が深まり往く。合掌。2015/10/23
不羈
16
何度も読み返しながら読んだ、虚無へと至る道。そう、これは、主人公のボイルドは鏡の向こうにいる風の谷のナウシカだ。 ナタリアの「愛してるわ、ディム」、この言葉に尽きる。2012/09/26
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