出版社内容情報
広島に住む孤独な少女は、盆灯籠が似合う夏の日にある青年と出会う。毎年盆にしか会えない彼との逢瀬は彼女の生きる糧となり…。
内容説明
両親を交通事故でなくし、広島で孤独に育った少女・灯。ある年の盆のころ、灯は自分の背丈よりも大きな盆灯籠を片手に、両親の墓へと向かっていた。その途中、彼女はこれまでに感じたことのない不思議な雰囲気をまとった青年・正造と出会う。いつしかその人柄に惹かれるようになっていく灯。それから毎年、盆の時期だけ、ふたりは逢瀬を重ねていくが…少女と青年のひと夏の邂逅、その意外な行方を幻想味豊かに描く佳品。
著者等紹介
うえむらちか[ウエムラチカ]
1985年広島県生まれ。女優としてドラマ「ライフ」「おみやさん」「ももドラ」に出演するいっぽう、FM PORT(新潟県民エフエム)「TOKYO→NIIGATA MusicConvoy(THU)」ナビゲーターや、WEBラジオ「うぇぶらじ@電撃文庫」パーソナリティ、4コマ漫画連載など、多方面で活躍中。2010年、『ヤヌス』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
七色一味
45
読破。二部では少しォオー!!(゚д゚屮)屮と思わされましたが、全体的には遊びの足りない、荒削りな印象の作品。汗を粒とカウントするのは、感性なのかな? 言葉を飾る部分と気が抜けてる部分もないまぜな感じ。単純な話なので、もっとシンプルに書けば、もう少し違った印象になりそう。2015/01/19
まきこ.M
37
ほんわりと淡い光を発しながら美しい夜の水辺に浮かぶ蛍のような幻想的な作品。夏のひと時だけ毎年逢瀬を重ねる愛しさと切なさが漂う雰囲気は、「蛍火の杜へ」と重なるものがある。灯はどんどん成長する。正造は変わらない。惹かれる気持ちは募ってゆく。そしてその灯を見守る一人の青年の恋が入り混ざる第二章。紡がれるそれぞれの恋模様の糸をたどり、引き込まれていく2つの恋物語。2015/03/23
エンリケ
35
広島を舞台にした切ない青春物語。別々の主人公で視点を変えて進む二つのお話。この二人の男女に共通するのは孤独感。そして叶わぬ恋に身を焦がしている所。一話目はお盆に相応しいちょっとした怪談という風情。報われぬ恋の果てに少女がどうなったか気になりながら少年目線の第二話となる。そこで語られるのは少年の屈折した母親への想い。そして彼の心に映る少女の姿が儚く、より一層第一話の切ない余韻を掻き立てる。最後に示唆される少女の末路。それが想像通りなら余りにも哀れ。お盆の灯籠に込めた想い。それは亡き人への思慕なのだろう。2017/04/05
masa
32
紅玉いづき先生が観劇サイトの最前席で感想を書かれていたので、舞台『灯籠』を見てきた。その後、舞台の余韻を残しつつ読んだ原作。舞台での出演者の目線も良かったけど、原作もまた、想いの描写がいい。孤独に生きてきた少女・灯と、不思議な雰囲気を纏う青年・正造との邂逅。盆の僅かな時期だけの逢瀬。彼に恋していく過程がとても初々しく微笑ましい。そして広島弁がキュート。灯の温かくも切ない恋に心が締め付けられる。清水クン視点の第二話では、見えていなかったモノが視える構成に引き込まれていく。読後は切なくも静かで温かな光が灯る。2015/02/10
蔦屋重三郎そっくりおじさん・寺
32
ブックオフの棚を見ていたら、まだ新しい綺麗な本だったので何と無く手に取った。裏表紙の粗筋を見ると我が地元広島が舞台。カバーの著者紹介と写真を見るとかわいい美女で広島出身のタレントさん。タレントがハヤカワ文庫から書き下ろしで本を出すのか…と、意外に思い読む事にした。内容は広島の盆灯籠を扱ったファンタジー。不思議な味わいだった。ロマンチックと言おうか。冒頭帰省していた人物がまさかこちらだとは。2013/11/16