内容説明
荒廃した地球を離れ火星での250年間の凍眠を決断した人類は、地球の復興作業にあたる機械人を監視するため、人造人間アートルーパーを創造した。その一人、訓練部隊の慧慈軍曹は火星行きを拒む残留人一派と遭遇、交戦する。創造主から傷つけられた体験、そして機械人アミシャダイらとの出会いを経て、慧慈は自らの存在意義を問いなおし始めるが…。『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』に続く「火星3部作」完結篇。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。第1長篇『あなたの魂に安らぎあれ』以来、独自の世界観をもとに「言葉」「機械」などのテーマを重層的に絡みあわせた作品を多数発表、SFファンの圧倒的な支持を受けている。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞(以上、早川書房刊)。1995年、『言壷』で第16回日本SF大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
88
火星シリーズ3部作の完結編。SFの描く空間としては、地球と火星だけなので、けっして広大なものではないし、また時間軸も250年のスパンしか持っていない。にもかかわらず、神林の描く作品世界は実に壮大だ。アンドロイドと機械人アミシャダイの設定を通して、この作品で繰り返し問い続けられるのは、アンドロイドは(ひいては人間は)何のために存在するのか、生きていることの意味とは何か、である。主人公慧慈(アンドロイド)の成長と懐疑を通して我々読者もそれを追体験するのだ。そして、そのキー・コードは「愛」だろう。2013/08/14
そふぃあ
24
火星三部作の三作目。荒れた地球を復興するため造られた、アートルーパーと呼ばれる人造人間の物語。親が子どもを産むことも、新しい品種を作ることも、人造人間を造ることも、事象は同じことで、全てにおいて創造者は自分が生み出したものに復讐されることを覚悟しなければならないと思う。ただ都合よく利用できるだろうと、安易な考えで造ってはいけないと思う。この世界に生み出されるのは理不尽なことだし、自分をつくった存在への愛と憎しみ、この二つの感情は矛盾しないんだなとか、読みながらそんなことを考えた。下巻へ。2017/06/30
かとめくん
23
荒廃した地球をいったん捨て、火星に移動しそこで冬眠する。冬眠中に数百年をかけ地球を人の住める状態に戻そうという壮大な計画を進める中、移民を潔しとしない人たちがいて、国連軍とこぜりあう。人造人間である主人公たちはこの過酷な環境下で、人間以上ではないものの、単なる道具として使われるわけでもなく国連軍麾下で争いの渦中に身を置くことに。経験を重ね精神的にも思考的にも成長していく人造人間たち。しかし、人の争いは激化し、彼らは独立を目指そうとする。2021/07/27
秀玉
17
小説の題名から上下を混乱して、ほぼ新品の中古本の「上」を二冊購入。そこで「下」をネットオフで購入したのだが、日焼け本で、しょうしょうガッカリしたので、読んでしまうことにした。私はキレイな中古本購入を良しとしているので、家に置いときたくないのです。さて本作ですが、出足は引き込まれない。出足に掴みがないので坦々と進む。だが何となく壮大な物語なんだろうとは感じる。人間らしさ、心とは、人の心を持つとはどんなことを指すのか、この辺りで手塚作品「火の鳥」を思い出す。この小説のタイトル「膚の下」もそれを表しているのか?2024/09/20
シタン
14
神林長平年代別ベストにて2000年代の第一位に選ばれた作品。『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』に続く火星三部作の第三作で、時系列的には最も過去が描かれている。世界観は共通しており、懐かしの地名や人物が出てくる。はじめに何があったのかが明かされるというわけ。 物語としては人造人間アートルーパーの視点から描かれており、その成長を味わえる。機械人、人造人間、人間が登場するが、その違いの描写が興味深い。さらにはモデルの違い、個体の違いまで。人造犬もでてくる。一体どんな真実が明かされるのか……次の展開が楽しみ。2024/04/11