内容説明
人は亡くなると、天国の入口でこう言われます。「あなたの人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んで下さい」天国に行くまでの7日間で、死者たちは人生最良の思い出を選択するように迫られ、それを職員が再現して映画に撮影し、最終日には上映会が開かれるのである。そこで死者たちは改めて自分の一生を振り返る。懐しさにひたり、後悔したり、思い悩んだ末に彼らが選んだ思い出は…話題の映画を是枝監督自ら小説化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
74
是枝監督の映画は好きでほとんど観たけど、これは観てなかったな。死者があの世へ行く前に一週間滞在し、人生の中で大切な思い出をひとつだけ選ぶ場所。そして選んだ思い出を映像化してくれるところ。そこに働く人達が何者なのかも気になりつつ、やってきた死者たちがいろいろ思い出を語るのを読みながら、私だったら…と考える。ひとつだけと言われたら、結構悩みそう。で、結局はなんでもない日常のひとコマみたいのになったりして。きっと、静かで穏やかで美しいであろう映画も観てみたい。2020/04/16
文庫フリーク@灯れ松明の火
52
霊が仏に昇華するまでの、あわいの中継点。昔の学校のような木造施設。月曜日訪れた二十二名。個別に説明されるのは『あなたの人生の中で大切な思い出を〔ひとつだけ〕選んで下さい』『職員が映像化して再現したその思い出があなたの中に鮮明に甦った瞬間、その思い出だけを胸に〔あちら〕へ旅立ちます』思い出選びに与えられるのは四十九日ならぬ三日間。木金手作り制作された映像を胸に土曜日には旅立ちます。個別に面談して思い出選びアシストする職員は見習いのしおり含め四人。メガホンを取った映画監督自らの小説化。→続2011/03/29
おさむ
31
小説家になりたくて早大文学部に入ったという是枝監督の筆力に納得する小説でした。「死んでから成仏するまでの限られた間に来し方を振り返る」。このテーマは「椿山課長……」や「カラフル」など過去多くの小説で使われてきました。今作品は複数の人びとの人生模様、戦争という深い傷痕、思い出づくりを手伝う担当者など、独特のひねりが物語に広がりを与えているように思います。2015/10/30
紅香@新刊購入まで積読消化あと4冊⭐︎
28
「あなたの人生の中から大切な思い出を一つだけ選んで下さい」天国に行くまでの7日間。。もしも死んでからこんな質問が待ち受けていたら私は何を選ぶだろう。起きて、食事して、仕事して、眠る、その繰り返しの毎日の中から。何を一番大切にしてきたか、その人の芯みたいなものが見えてくるから不思議。『思い出は化石のように形を変えずに眠ってる過去ではないのだ。思い出は風化していくだけじゃない。成長していくこともあるのだ』神様は人々に人生をプレゼントして、その感想を聞きたいのかもしれない。幸せだったなら神様だって嬉しいはず。2017/10/08
coco夏ko10角
24
人生の中から大切な思い出をひとつだけ……こういうのって読みながらつい考えちゃったり。文体になかなかなじめなかった。映画の雰囲気良さそうだなぁ。2016/03/15