内容説明
降旗少尉以下、3名の首都圏情報防衛軍団兵士が遂行する作戦名は“マタタビ”作戦。首相の行方不明になった愛猫を捜し出せ、というものだ。ただしその猫は、脳にひじょうに貴重な情報が入力された、人類の存亡を決する猫なのだ。3名はなんとか目標の猫を発見したものの、コンタクトしようとして、失敗。しかも、本部との通信は不能となってしまった。現在地不明のここは、すでに死後の世界なのか?俊英が描くSF長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
116
こういう本を読むとSFは本当に面白いと思う。普通の文学では、取り扱わないようなことを、物語にしてしまう。自分の知らない世界が目の前に開けてくるので、わくわくして読める。情報軍の軍人3人が死後の世界に運ばれて、首相の飼い猫オットーを探すことになる。何やら冗談めいたプロットだが、実際にユーモアたっぷりで、何度も笑った。それでも、哲学的な問い掛けが何回もなされる。死とは何か?死後の世界は実際にあるのか?人間の意識とは?これらの問い掛けが挟み込まれる。そして結末で示される答えはずしりと重みがあり、感動的だ。2017/04/22
なる
10
個人的には、あくまで好みの問題だけれど、文体が少し軽すぎるきらいがあって、ちょっとのめり込みにくかった。けれど、軽い文体の中にかなり哲学的な思想や膨大な科学的知識をまぜこませていて、正直そこには圧倒された。ストーリーもまさにSFを地で行く設定で、空間が分断されるというそのアイデアには本当に頭が下がる。会話劇に終始しているのも、もしかしたら敢えてなのかもしれない。文体に抵抗を感じない人であれば本当に名作だと思う。自分はそこだけが合わなかったけれど、内容はかなり面白い。名作だと思う。2020/06/14
活字スキー
9
内容をしっかり確認する事なく、なんとな~く洒落たタイトルに惹かれて読んでみたら思いの外『シュレ猫の息子でもない』な内容で驚いた。……とはいえ、『だれむす』自体ちゃんと理解出来てる訳ではないのだが。三人のどこかとぼけたやりとりに釣り込まれるように生と死、認識と存在、虚構と現実のゆらぎに翻弄されながらも、自ら求め信じる意思の力が鍵となる安定の神林クオリティに納得のフムンの嵐。死の不可逆性とコミュニケーションの不可能性すら肯定し、カオスとコスモスの境界を突き抜けた先で食べるおはぎは最高だ。2015/04/08
どんまいシリル
9
タイトルから想像したよりは、軽快で、内容も理解できてよかった。登場人物が、「ぼくには全然わかりません」と言っているので、私が解らなくてもいいかな、という感じで…。ラストはちょっと感動して、涙がでそうだった。納得した死を迎えることは、自分には不可能だけど、生きることに前向きになれる、良い作品だった。2014/07/15
おーすが
8
「確率1/2で生き返れるな」「お前、くじ運は?」んーかっこいい。会話が多く、最初これ誰が喋ってんだ?と混乱したりしたけど知念軍曹をイケボ設定にしてからスラスラ読めた。脳は巨大幻想の受容器官で情報伝達不能=死。アイデンティティゆるがす壮大なテーマとマタタビ領域からラストにかけての切ない展開すてき。喵〜!2019/10/10