内容説明
世界を“時間”“実現事象”“可能事象”の三次元として表現する事象理論の発明者にして犯罪者であるバールが、理論士イシスのリンボス世界(=地球)でのシミュレーションに干渉してきた。北極圏に近い寒村センティシス、ニューデリー、ロンドン、そして日本の各地で、イシスと恋人である弟のアシリス、バールたちは、名前と外見をさまざまに取り替え、自らの目的を達しようとするが…神林SFの最高峰、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かとめくん
15
上巻から30年後。といっても、時間にどれだけの意味があるのかもよくわからない設定の中、次世代の存在を交えてせめぎ合いは続く。人間の存在はカミス人にとっても重要で、多くの人間を巻き込み物語は進む。姉と弟の恋は成就するのか。そもそも、弟が愛したのは個人としての姉イシスなのか、あるいは自分にとっての姉である存在そのものなのか。親や恋人の存在とは。LGBTも吹っ飛ぶ禁断の恋愛SFの行きつく先は。それにしても難解だった。2021/10/21
YH
3
発想は面白いんだけど、カミス星人の勝手で地球が危機に瀕している理由が近親相姦とかくだらない個人的な事情によっているのが残念。セラフやダゴムって物語に必要だったかなあ?2020/09/21
ふぁぞむ
3
時間が無くても世界は記述できる、時間軸に沿って動くのではなく事象間を動くことで存在している世界。離れた事象を実現させることが可能な登場人物により世界が変わっていく。ファンタジックとも言える世界の中で、理論を描き続けて最後に残るのは愛。いささかナイーブな気もするけれどそこがいい。2010/07/30
はら
2
かなり私には難解だったけれど、理論と行動と言葉が重ねなられる戦いの行く末にたどり着いた終わりは美しかった。姉を愛している、から愛していた、と言葉で綴る変貌は切なく、そして満足感のようなものも湧き上がる。未来へ、アシリスとは別の世界へと旅立った彼女は何を見つけるのか。言葉でも理論でも現せないこの世の真理を見つけられることを願う。2017/10/09
しまっち。
2
事象をわかっているつもりになりながら、感覚で読み通した、という感じ。自分の事を知らないのに第三眼の力を持ってしまっているレムエル=ルシファがとんでもないことをしでかしそうでハラハラしてしまった。イシスとアシリスの愛は大きい。なんか難しいけど、展開がとにかく面白かった。2014/07/30