内容説明
雪の夜、チンピラ二人組にボーナス袋を強奪され、北岡吾郎の平凡なサラリーマン人生は終わりを告げた。彼は相手を叩きのめしてドロップアウト、いつしか山谷に流れついていた。自由気儘なその日暮らし、今では立派なアル中だ。そんな彼が、同じ山谷のアル中で、連続行き倒れ事件を追うライターの初島から誘われ、一念発起して断酒に挑むが…謎の連続怪死事件を縦糸に、男たちの勇気と友情を感動的に描く、地獄の断酒小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
118
断酒小説と銘打たれた本書。いかにアルコール依存症を克服するかが綴られている。従ってここに登場する人物たちは極度のアル中ばかりで信じられないほど酒を飲む。全編これ飲酒シーンばかりと云ってもいいほどの内容だ。社会の底辺を生きる男たちの友情物語はしかし断酒では幕を閉じない。彼らは亡くなった友への弔いを終えた後、再び酒を酌み交わすのだ。それが彼ら人生の落伍者たちの、そして酔いどれたちのブルース。地図にない街山谷。それは未来という地図のない街でもある。明日なき街を行く2人にまたどこかで出逢うことだろう、間違いなく。2019/07/07
はつばあば
61
冒頭に「漂泊者」登場の村雨と国分がチョイ出場。国分が傍固めかなと思いきや「男たちは北へ」の桐沢が偽名で登場。禁煙もしんどいが禁酒も大変そうだ。私もお酒好きだけど・・読み友さんのウワバミ程ではないと思う。まぁ気をつけて程々に楽しみたい。さて、今回はチンピラにボーナスを取られたサラリーマン北岡が流れ着いたのは山谷。この地のルポを書くつもりで来た初島。自由気ままに過ごせるほど怖いものはない。いつしかアルコールに浸る毎日。禁酒のしんどさ・・震え、幻覚、幻聴。何が怖いって禁酒の苦しみだろうね。これが薬ならなお怖い。2017/08/06
白のヒメ
51
中島らもさんの小説を彷彿とさせる断酒小説なんだけど、ちゃんとミステリーになっている。山谷の日雇いのアル中達が、立て続けに起こる夏の行き倒れに不信を抱き、事件を追っていく・・・。私も酒好きなので、休日の昼間に健康センターで一杯やりながら読み進めていたのだけど、断酒の描写があまりに壮絶で、ページははかどるのだけれど、酒は進まなかった。お酒は適量を楽しく飲む。これに尽きるけれど、そんな事をこの本の感想に書けるということは、幸せな事なんだなーと、しみじみ思った。2019/07/13
ぷにすけ
22
山谷のドヤ街で起こった連続殺人事件を追う三人の男たちの強烈な断酒を描いた摩訶不思議な小説。殺人事件よりも断酒に苦しむ男たちの姿のほうがよっぽど怖いよ。キリさんの本名を知って、前作からの変わり果てた姿にあぜんとしてしまいました。2019/04/03
ヤスヒ
15
単身赴任で宇都宮に勤務していた北岡吾郎。雪の夜のある出来事がきっかけで彼は会社を辞め人生をドロップアウトしてしまう。そして真っ当な人生から降りてしまったという実感からかやがて東京の日雇い労働者の街・山谷に流れ着くがそのときには彼はもう立派なアル中だった。この小説は断酒をテーマに、また山谷を舞台に謎の連続怪死事件を絡めて男たちのプライド、そして友情を描いた物語。とにかく断酒を試みた北岡たちの様子が壮絶だった。ストーリー的に面白いというよりドラマがギュッと凝縮されたような感じ。ドラマの濃さに引き込まれた一冊。2012/05/09