内容説明
あふれんばかりの両親の愛情を浴びて育った健彦。猫だけを友達に孤独な夏休みを送る美夜。あるひどく寒い夏の日、同じ別荘地にいた二人が出会った時すべてが始まった―野口健彦が、自らの少年時代に起こった殺人事件を描いた『寒い夏』。健彦をベストセラー作家に押上げた自伝的小説が、彼の幸福な結婚生活に予想だにしない恐怖をもたらした。20年を隔て甦る真実とは。著者会心の書下ろしファンタスティック・ホラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skeptical_sheep
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二部構成になっているのだが、前半の「寒い夏」はとても面白い。孤独な少女視点の章と、野口という家族の章とが交互に語られるのだが、この人達はどう交わるのか、この先どうなるのか、とハラハラさせられて良かった。ただ、後半の「夜にひらく窓」になった途端、急激に失速する。野口健彦の自分語りが冗長で読むのがしんどかった。ラスト個人的にはハッピーエンドな気がするので、もっと救いがない感じでも良かった。女性ならではのふわっとエンドという感じ。2015/06/29
MitsのHoney
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ある程度予想がついてしまうようでいて、どこまで行っても『謎』であり、『そう来るか!』という流れに引き込まれました。ちょうど長編版・世にも奇妙な物語といった感じ。この構成はすばらしいと思いますが読後感は余りよろしくないかも。ひょっとしたら作者は不慮の事故等で愛猫を失ったのかもしれません。その『もう戻らない』という喪失感や哀惜の念が物語から溢れてきて、こちら側を痛い気持ちにさせるのかもしれない、と感じました。2009/04/24
tommygereco
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途中までミステリ。最後はファンタジー。2007/01/07
埋草甚一(U.J.)
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僕は久美沙織に会ったことがある。年に一度は顔を合わせる。お宅にも伺ったことがある。 その住いを下敷きにした舞台設定で、人外の者が跳梁する。 二部構成で一部が、二部の視点人物の創作の筈だったのだが、やがて現実と癒着していくが、意外な結末。暗く重い幻想譚として幕を閉じる。 人類は猫に翻弄される運命なのだ。 他の作品に比べて出色の恐怖を齎す。2019/12/26