内容説明
交通事故で瀕死の重傷を負った少女は、半年の昏睡から目覚めた。身体に傷は残っていないにもかかわらず、事故の後遺症か、彼女は外界に対する現実感を喪失したまま悪夢に悩まされつづける。そして次第に明らかになっていく恐るべき事実…表題作「今はもういないあたしへ…」。汚れきった海を裸で漂っていたひとりの少女。その少女をめぐり、彼女を見つけた三人の男女がまきこまれていく悲しい運命…23世紀の海上都市を舞台に生物の進化する意志、時を超えた想いを描いて1982年の星雲賞日本短篇部門を受賞した「ネプチューン」の二篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬ
31
☆3.5 6冊目にして新井素子構文にもようやく慣れてきた感がある。併録の「ネプチューン」はなかなか良かったな。壮大な進化のロマンを感じるよね。表題作は主人公の想像描写がほとんどだけども、その3割くらいに「これこれこうだからこうなったのである。」と淡々とした事実描写も挿入してほしかったところ。2021/12/27
sakadonohito
18
2つの物語が収録されている。正直自分には合わなかったがそれぞれ思考のトリガーにはなる作品だった。クローンを使った医療行為は倫理的にどうかとは別に、自分と同じ姿の存在が切り刻まれたり代わりに死ぬという事実に罪悪感を感じ心が耐えられない人もいるのではないか?2022/08/25
おMP夫人
11
御伽噺のようなSF『ネプチューン』と、表題作の2本を収録。最初に読んだのは、中学生のとき。それ以来の再読。良くも悪くも作者の若さが出ているけれど、それもまた、ひとつの味。ソフトな文体のくせして、わりとヘビーな内容。口当たりは甘いのに、のどごしはちょっぴり苦い。そんな二つの物語。本編も好きなのだけれど、あとがきのハイユニ鉛筆のエピソードもけっこう印象に残ります。それにしても、新井素子さんの文章はクセが強いけど中毒性がありますね。私は、好きです。2012/04/16
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
9
蔵書 小学生に星へ行く船シリーズを紹介したら、懐かしくて読み返しました。2020/10/18
仲本テンカ
9
感傷的で感情的なSF、とても好きです。人魚がタイム・トンネルからやって来た。医療界の大いなる陰謀に気づいた。けれどもそんな事、男が考えてればいいような話は、主人公、すべてぶっ飛ばします。そんなことより、「私」はどう感じたのか。「私」はどう思ったのか。その想いを重視した方向に展開していく物語の疾走感。これには、むちゃくちゃしびれました。この観えるものだけ観てるかのような超能力、かっこいいです。超人ですね、新井素子!2013/06/18