内容説明
異星人のメッセージの解読結果は“メシを食わせてやる”だった。宇宙局は御招待にあずかるべく大食漢の松崎を指定の木星衛星軌道へ送り込んだが…食と愛の宇宙的関係を描く表題作ほか、300年の刑期を終えて出所する少女パティと初対面の家族との心の交流を描く「パティの出てくる日」。恋人と田舎町の映画館に入った僕はどう見ても宇宙人の3人組と出会う。彼らと共に観た映画には…故郷喪失者の想いを描く「シネマハウスの夜」。死んでしまった松崎が宇宙の胃袋のような世界を巡る書き下ろし中篇「神の糧」。などSFマインドあふれる8篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KANEO
16
“食”は生物にとって必要不可欠であり、最上の悦びでもある。だが、その“食”に関して我々人間ほど業が深い生き物はいるだろうか。 本作は9篇収録されたSF短編集だが、後半の“食”をSF的見解でユーモアたっぷりに皮肉っぽく描いた「松崎&小坂シリーズ」の3部作が最高だ。特に表題作は宇宙人とのファーストコンタクトを描いた作品だが、それが宇宙人からの「来い。メシ、食わす」という食事会のお誘いってんだからこれが面白くないわけがないじゃないか。願わくばこのシリーズもっと読みたかったな。 それにしても…お腹、空いた。2015/01/10
亮人
13
水見稜の唯一の作品集。創元SF文庫の『マインドイーター【完全版】』も積んでるが、より軽い読み味っぽい作品集が手に入ったので先に読んでみる。シリアスで情感重視な前半と、コミカルでSF重視な後半。どちらも味わい深いが、特に後半が面白かった!大食漢・松崎が主人公の連作3作。三大欲求の性欲ばっかりが美しかったりグロテスクだったりで創作物に描かれるが、食欲も原初的で官能的で愛に満ちた行為だよなー。そんな愛に満ちた行為を宇宙人が求めてくる表題作。傑作。2017/08/30
unknown
4
小粒なSFアイデアの効いたライトな短編集。宇宙人と「食」を通じて関わる、松崎&小坂のコンビが活躍する表題作とその続編はどれも面白い。「食事は「分子のシャッフル」である」という考えを軸に、宇宙と食(と排泄)の関係がSF的に料理されている。細胞・遺伝子再生技術が発達し、クローニングや数百年もの延命が容易となった世界での複雑化した家族関係を描いた『パティの出てくる日』、滅びかけた世界で「海」へと赴くロボットとラットとのやりとりを描く『バルカローレ』の2編もいい。後者のラストシーンは虚しくも美しい余韻が残る。2011/12/01
ついたことなし(凍結)
3
豪放な大食漢松崎と神経質だけど間の抜けてる小松のコンビが繰り広げる宇宙人と食にまつわる愉快な三篇もそうだけど、進化に膿んでしまった文明の行く末について多く取り上げられているのには『マインド・イーター』と通底するテーマ性を感じた。社会問題の扱い方には時代性を感じるものの、そのテーマにまつわる寂寥感は現代とも変わらない。終末的な世界で海に向かうロボットとネズミのやり取りが儚い「バルカローレ」といい、ピアノになりたい孤独な少女にまつわる怪奇を描く「オーガニック・スープ」といい音楽を扱うときの筆の冴えは随一。2011/12/29
megyumi
0
バイオロジカルなSF短編集。「パティの出てくる日」(1987)の、輪廻転生の末に解脱に至るというヒンドゥーor仏教思想を元にした、クローニングを繰り返して業を浄化する刑務所っていうの、我が夢に沈め楽園に登場した天人の遺跡に似てる。別にあれは繰り返しはしないけど/母親が留守番する子どものために作って行ったシチューの鍋の中で地球が辿った46億年の歴史が再生されて単細胞生物から節足動物魚類爬虫類そして人間が出てくる「オーガニック・スープ」はホラーとしても面白いけどやや理解が足りない気がする→2014/07/27




