内容説明
爆弾テロに巻きこまれ、記憶を失った報道カメラマンのグレイ。彼のもとへ、かつての恋人を名乗るスーザンが訪ねてきた。彼女との再会をきっかけに、グレイは徐々に記憶を取り戻したかに思われたのだが…南仏とイギリスを舞台に展開するラブ・ストーリーは、穏やかな幕開けから一転、読者の眼前にめくるめく驚愕の異世界を現出させる!奇才プリーストが語り(=騙り)の技巧を遺憾なく発揮して描いた珠玉の幻想小説。
著者等紹介
プリースト,クリストファー[プリースト,クリストファー][Priest,Christopher]
1943年、イギリスのチェシャー州生まれ。1966年に短篇“The Run”でデビュー。1974年の『逆転世界』で英国SF協会賞を受賞。近年は、世界幻想文学大賞を受賞した1995年の『奇術師』(ハヤカワ文庫FT)など、SFと幻想小説の境界線上にある作品を発表している。1984年の『魔法』もそのひとつで、ドイツでは優れたSFに与えられるクルト・ラスヴィッツ賞を受賞した
古沢嘉通[フルサワヨシミチ]
1958年生、1982年大阪外国語大学デンマーク語科卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白のヒメ
45
題名からファンタジーかと思いきや、なんのなんの魔法(文中ではグラマラスという言葉になっている)とは人間の精神性を表現する一種のメタファーであり、非常に哲学的で考えさせられた。物語の終盤になると肌が泡立ってくるような恐怖さえ覚えた。人間に視える事、つまり認識しているという事が、実はどれだけ儚く脆い事なのかについて、私たちは無知だ。あなたは存在しないと誰かに言われて否定する。じゃあ証拠はあるのかと聞かれたら、私は答えられない。この本を読んだ後では答えられないよ。こわいよー、まじ、ホラーだ。2018/02/23
miroku
29
プリーストらしい作品。見方が独自と言うか、普通じゃない。すっきりしない部分も含めてプリーストらしい。2016/07/11
ちゅんさん
19
正直、何がなんだか最後はよくわからなかったが、この小説の魅力"glamour"にやられた。とても面白かった。タイトルはそのまま“the glamour”でもよかったんじゃないかな〜。2018/04/15
霜月ざら
15
記憶喪失に三角関係というとありがちなラブストーリー?と思ってしまうかも知れないけれど、この話は考えれば考えるほど底が見えず、深みにはまってしまう。自分の存在さえも疑うような、なんともいえない不安感に浸食されるような気持ちになった。後半はどうなるのかドキドキして一気読み。騙されたのか、本当に魔法にかけられたのか。第一部を読み返して、なるほどと溜め息が出る。とにかくすごい。2017/03/26
ちょろいも
9
再読。以前読んだ時の呆然感をあらためて味わう。きっちり精読して整理したい気もするけどこのまま迷子を味わいたい気もする。「地図通り歩いたのに迷子になったじゃん!」と怒る人もいるでしょうが、それ、そういう地図ですから。2017/03/25