出版社内容情報
生者は若返り、死者は墓から蘇る時間逆流現象"ホバート位相"が発生した世界で起こる奇妙で不条理な現実を描くディック幻の傑作
内容説明
死者は墓から甦り、生者は若返って子宮へと回帰する―1986年、ホバート位相と名づけられた時間逆流現象のために、世界は一変した。死者の再生と売却を請け負うセバスチャン・ヘルメスは、ユーディ教の始祖トマス・ピークを墓から掘りだしたことにより、公安機関“消去局”とユーディ教指導者、ローマ・シンジケートをめぐる戦いに巻き込まれる。不条理と狂気が交錯するディック幻の傑作が改訳版で登場。
著者等紹介
小尾芙佐[オビフサ]
1955年津田塾大学英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たぬ
16
☆4 『アルジャーノンに花束を』をきっかけに贔屓の訳者となった小尾芙佐さんの翻訳が読みたく手に取りました。フィリップ・K・ディックは初読みです。地面の下から死者がよみがえり、胃の中のものを皿に吐き出すのが食事…そんな世界で起きた出来事はどう展開するのか。私は宗教に疎いから教祖様と教主の対立はそこまでエキサイトしなかったけど、したたかすぎるアン・フィッシャーとの対峙なんかの人間模様が意外と面白かったです。2025/04/22
オキアミ
13
時間が逆行した地球の話。逆行現象はホバート位相と呼ばれてかなり無秩序。特に挨拶の逆転には混乱させられた(会話の始まりがさようなら)。主人公たちの行動が尽く裏目にで流れは少し辛い。どう着地させるか想像するのは楽しかった。中盤以降、物語が目まぐるしく理解半分のうちに終わってしまった。不思議な感覚だった。2025/03/19
ソフィア
11
大した説明もなく、いきなりホバート位相だのソウガムだの市民特殊図書館だのという意味不明な概念が連発する上、1960年代の価値観の随所に近未来的要素が加えられた奇妙な世界観はさすがフィリップ・K・ディックです。一方、設定さえ慣れれば、ディック作品の中では読みやすく面白い部類に入るかと思います。時間が逆行していることから、食物を吐き出したり、男性が髭剃りでなくて髭植えをするのがツボでした。ハゲは存在しない世界なのでしょうかね?2023/08/30
ふみふみ
9
時間の逆転現象により死者は墓場から蘇り、生者は若返ってやがて子宮へと還っていく。この世界に神学論が絡みあってディックの数ある作品の中でも一二を争うクレージー度ではないでしょうか。物語は蘇ったカルト教の創始者を巡って、彼を墓から掘り起こした主人公と、消去局、カルト教の現指導者、ローマ教会が三つ巴で争うという筋立てでスラスラ読めるんですが、あの名作ユービックにも似た恐怖感、気持ち悪さが残ります。特に閉所恐怖症の人は要注意です。 2020/08/06
kurupira
8
時間逆流現象の定義の曖昧さを感じたが設定としては面白い、ディックの宗教や哲学が絡む作品としてはかなり読みやすかった。死者が墓から蘇ることからキリストとの接点を感じるが、蘇った宗教家は神に触れた近づくが、登場人物や群がる一般人の視点、更には読者視点では理解不能なのか、逆に何とか感じさせたいのか。神とは理解不能で別次元の存在、それでも人間は何かにすがるか、人生で仕事に埋没する必要があるのか、ラストは虚しさを感じた。(時間逆流という事でTENETサントラを聴きながら読み終えた、SFに合うアルバムだな)2020/10/05
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