出版社内容情報
22世紀、優秀な能力を持った〈異人〉と〈新人〉が、60億の〈旧人〉を支配する地球に、外宇宙からフロリクス星系人が飛来した……
内容説明
22世紀、世界は高い知能を有する“新人”と、超能力を持った“異人”が、60億の“旧人”を支配する階級社会と化していた。タイヤの溝掘り職人ニック・アップルトンは、息子を公務員にすることを願う典型的な“旧人”だが、黒髪の少女チャーリーと出会って…。一方、“旧人”の期待を背負って深宇宙へ旅立った伝説の人物プロヴォーニが、地球外生命体の“友人”とともに帰還しようとしていた。鬼才のディストピアSF。
著者等紹介
大森望[オオモリノゾミ]
1961年生、京都大学文学部卒、翻訳家・書評家。訳書、編訳書、著書他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hikarunoir
12
変異者と新人類の結託での圧政も表面上偽の救済で、状況転覆に外宇宙へ救難を求めた造反者に希望が集中、帰還した彼と友の皮肉な解決を一市民視点で。2023/04/26
kurupira
11
テーマは共存かな。人間でも能力によって身分が分かれたり、形が違うエイリアンと同じ社会で生きることになれば、かなり軋轢があるはずであり、、ディックにしてはそんな世界をアクション多めで描いている。主人公に特別な能力はないが、一歩引いた目線で世の中や様々な人物を理解できるので生き延びていくのかな。別の見方をすると、多様性を持つ社会は、突発的な情況に強いという事にもなるか。ニックとチャーリーは、フィフスエレメントのブルースウィルスとミラジョボビッチとイメージが少し重なる。2019/09/21
ふみふみ
9
地球が新人、異人、旧人の階級社会、所謂ディストピアと化した世界にそれを打破すべく伝説の人物が地球外生命体を伴って帰還、と一体このプロットをどう展開するのだろう、例によって途中で破綻するのか(笑)と期待しながら読んだのですけど、それなりに収束し、ディックぽくないというか拍子抜けの印象です。終盤なんかはやっつけ仕事の気がしないでもないですね。まあ、ディック自身本作について身も蓋もないような発言をしているようで、ただそういうのも全てひっくるめて私はディックが好きですが。2019/12/02
roughfractus02
7
独裁体制の中で困窮した生活を送る主人公が住む地球に異星人が襲来して世界が変わる、と本書の素直な筋書きから予想する読者は、主人公がタイヤ溝彫り職人である点を見逃したのかもしれない。『銀河の壺直し』の陶芸修理屋が偽の神デミウルゴスが作る世界のエントロピーを増大させるべく振り回されたことを思い出せば、このチグハグな物語は修理された偽の世界の隠喩として深読みしたくなるからだ。すると今度は、真の神の侵入は人間の想像を超えた世界を創造し、救済は人間のためにあるのではない、という作者独自の世界観が繰り返されるのだが。2019/11/02
ろびん
4
最後のイルドとの会話がなかなか好きです。2020/02/01