内容説明
惑星ソラリス―この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく…。人間以外の理性との接触は可能か?―知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。
著者等紹介
レム,スタニスワフ[レム,スタニスワフ] [Lem,Stanislaw]
1921年、旧ポーランド領ルヴフ(現ウクライナ領)に生まれる。クラクフのヤギェウォ大学で医学を学び、在学中から雑誌に小説や詩を発表し始めた。51年に第一長篇『金星応答なし』を発表。深遠かつ巨視的なテーマの作品から、20世紀世界文学史上の巨人の一人に数えられる。2006年死去
沼野充義[ヌマノミツヨシ]
1954年生、東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
574
再再読。以前の2回は『ソラリスの陽のもとで』(ハヤカワ文庫、飯田 規和訳)で。これまでの版はロシア語からの重訳であったが、今回はポーランド語原典からの訳出。やや煩雑に思える節もないではないが、やはりこちらが正統派であろう。作品の解釈は、それこそソラリス学がそうであったように百花繚乱。私自身の読者としての解釈でさえ前回とは違っている。基本的にはファースト・コンタクトをテーマとするのだろうが、そこには不条理なまでの意思の不疎通が立ちはだかっている。今回痛切に感じたのは、全編を覆う圧倒的なまでの寂寥感であった。2018/07/16
mae.dat
294
SF名著の一つに数え上げられる本書。これ迄、途中で訳が分からなくなり挫折を繰り返していました(←それはソラリスに依る攻撃の所為なのかも知れない。いや、そうに違いない)。AIに相談したら「(多くの読者が経験する事だから)無理に理解しなくても良い」等と励まされ、少し緩やかな心算で読み始めました。でも後半に差し掛かった所で、やっぱりAIに「これはこう言う事?」等と確認する事になり。お陰で頭の中が少し整理されて助かりました。『ソラリス』みたいなものに関してはこう言うやり方も“あり”なのかも知れませぬ。2025/02/05
パトラッシュ
194
初版刊行から60年近い現在はファーストコンタクトSFではなく、人類同士の衝突を描いたドラマに思える。いくら試みてもまともな対話が成立しないソラリスは、自分たちの民族や宗教や感情こそ至高であり、周囲の言い分など無視して当然と信じて疑わぬ人類そのものなのだ。この世には科学的合理的思考では理解不能な他者がいるとレムに教わった。今、日本はいくら話しても理解し得ない隣国と永遠に付き合っていかなくてはならない。それはまさに「地獄とは他人のことだ」というサルトルの言葉の具現化であり、未来は本書により予言されているのだ。
藤月はな(灯れ松明の火)
149
映画のタルコフスキー版、ソダーバーグ版も共に未見。惑星ソラリスの海が投影してきた人々。彼らは死者でもあり、自分が求めていたものでもある。それでも彼らに出会った人々は狂乱に陥らずにはいられない。何故なら対象者がどんなに目を背けたく、忘れたいと思ってもいることもありのままに映し出す鏡でしかないから。そして鏡には理由はないという気味悪さ。醜悪なビーナスやハリーが出てくるシーンは映画『イット・フォローズ』を想像してしまって怖かった。そして何もかも優先順位と意味付けして安堵する人知に対し、ソラリスは何て穏やかだろう2018/02/08
Kajitt22
144
赤と青、ふたつの太陽を持つ、美しくもミステリアスな惑星ソラリス。その意思を持った鈍色の海とのファーストコンタクトは、その人の無意識の底を具現化した訪問者だった。その意味は親切、友情、不意打ち、嘲笑、拷問、顕微鏡的研究、それらのすべてか、あるいはまったく別のことか。長大なソラリス学の解説が苦痛だが、ハリーの登場が、著者の意図に反して、この物語を色彩豊かで陰影濃いものにしている。宇宙飛翔願望のある人でなくても、日々の未知との遭遇に備え必読の書です。2016/05/12