内容説明
友人グロリアの自殺をきっかけにして、作家ホースラヴァー・ファットの日常は狂い始める。麻薬におぼれ、孤独に落ち込むファットは、ピンク色の光線を脳内に照射され、ある重要な情報を知った。それを神の啓示と捉えた彼は、日誌に記録し友人らと神学談義に耽るようになる。さらに自らの妄想と一致する謎めいた映画『ヴァリス』に出会ったファットは…。ディック自身の神秘体験をもとに書かれた最大の問題作、新訳版!
著者等紹介
山形浩生[ヤマガタヒロオ]
1964年生、東京大学大学院工学系研究科都市工学科修士課程修了。翻訳家・評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 5件/全5件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
54
読書時の自己感情の喜怒哀楽。作り話と分かっていながら、登場人物の心情はまるで自分の事の様に感極まる。主人公のとった行動について良し悪しを論じ合う。それはまるで、猫が人がじゃらしているのを分かっていながら、思わず我を忘れてじゃれてしまうのと同じこと。ならば、読書は人じゃらしだ。読書に限らず、物語はそういう事。虚構と分かっていながら自我を忘れ、まんまと乗ってしまう。物語を読むと言う事は論理的に思考する自意識より、感情を掌る無意識に支配される事になる。さてこの自意識のコントロールの利かない無意識は何者?2023/09/05
かるかん
46
ディックも遂に行くところまで行って、頭がおかしくなってしまったようだ。 難解すぎてわからないし、そもそも読んでて苦痛だった。 また挑戦したい。2015/10/31
ころこ
36
ディック作品に愛着があるかどうかで随分読み方が変わったはずですが…その愛着の持ち方でファットとソフィアのふたりの「不気味なもの」にもなり、またファット=フィルであることをソフィアが指摘することで、ファットとフィルの間の「不気味なもの」ともなります(表紙のふたりの顔は一体どのふたりなのでしょう)。ファットが死んだ瞬間にソフィアが立ち現れ、更にソフィアが死んだ瞬間にファットが再出現して新たなソフィアを捜す何も生み出さない人類史の逆回転のような無限後退、しかしこれが真理を伝えているようにみえるのはなぜでしょう。2021/05/24
おりん
27
数年前に挫折した本。今回最後まで読み通したが、あまり面白くなかった。正直に言ってよくわからない。読者に優しくない。何度か読み返せばもう少し理解できるような気もするがそこまでするほどの気力もない。ただ、この本はディックがこの世界の成り立ちについて考えたこと、哲学を形にしたものではないか、とは思う。世界の成り立ちについて述べたものと言えば宗教や宇宙論があると思うが、本書はそれらがちょこちょこ出てくる。宇宙論的ガジェットが出てくる部分はそれなりに面白かったが、神学パートはさっぱりわからず面白みを感じなかった。2017/11/07
masabi
26
【要旨】友人の死をきっかけにピンクの光線を受けたファットが友人達と神学論争を繰り広げる。【感想】狂気と正気の境界線がはっきりしているようで曖昧だ。狂気と現実に接点が生まれ、今まで狂人の戯言とあしらっていたものが実は真理を宿していたのではと一転して狂人から賢人へと祭り上げられる。難解な神学論争を流見しても読んでいてくらくらした。ドラッグや精神病はこんな感じなのだろうか。一番の驚きは作者の実体験が元になっていることだ。2016/12/21