出版社内容情報
〈3・11〉東日本大震災があった2011年、画家の家の庭に、たぬきが現れた。「産む」「育てる」「家族」──〈生きる〉とは? さらに「別れ」「旅立ち」を通して、たぬきたちが画家に伝えたものは?
内容説明
2011年の春、絵描きの家の庭にあらわれたたぬきの一家。産む、育てる、いのちの絆の物語は、やがて別れと旅立ちへ。小さなからだ全身で「生きる」たぬきたちと絵描きとの、まぼろしのようなおはなし。
著者等紹介
いせひでこ[イセヒデコ]
画家、絵本作家。1949年生まれ。13歳まで北海道で育つ。東京藝術大学卒業。創作童話『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
118
ある日小さな森のような庭にやってきた、たぬき。子だぬきが生まれ、おっぱいを飲み、じゃれ合い、日々成長してゆく愛らしい姿。母だぬきは子を見守り、父だぬきは危険から守り、子離れの時を探って、やがて旅立ちの日を迎える。2011年の4月から翌年の夏まで、続発する余震の中で繰り広げられた生の営み。短い「幻燈」のような体験は、あるがままの「いのち」を描きたいという強い思いを生んだという。かけがえのない命。自然の木も花も生き物も。たぬきの親子にみられるような、シンプルな生の営みこそが当たり前に守られなければならない。2022/03/31
みかん🍊
94
2011年4月、緑豊かな庭のデッキに現れたたぬきの親子、彼らの子育ての日々を見守り記録する絵日記、震災の危険から逃れるため安全な人間の家の庭のデッキを選んで子育てをするたぬき一家、それを自らたぬきの村長となり温かく見守る作者、そして生きる為にまた引っ越して行くたぬきを通してあるがままの「いのち」を描きたかったという優しくあたたかいたぬきのイラストも可愛く素敵でした。2022/02/19
やま
84
いせひでこさんの庭で、2011年3月から1年余りにくりひろげられた狸の観察記です。いせさんが借りていた家の庭には、多くの木や植物が生えていて、まるで小さな森ようです。その庭で繰り広げられた狸の出産、成長、旅立ちを可愛らしい狸の絵入りで描かれた観察ノートが絵本として仕上がっています。絵だけ見ていても楽しく、微笑ましくて、顔がほころんでくるのが分かります(^-^) 🌿①➁へ続く→2022/04/25
yomineko@ヴィタリにゃん
81
読み友様からのご紹介本です📚いせひでこさんがサラサラと魔法の様に描いた可愛いタヌキの親子たち。大震災があって彼らの生活もいせさんも一変してしまう。そんな中懸命に生きる彼らに胸が締め付けられる。大人の方々にも是非読んでほしい名作絵本。さすがいせひでこさんです。2022/10/23
tenori
77
震災後のある日、作者・いせひでこさん宅の庭。突如として現れたたぬきの一家。それからの一年余り、たぬきと共有したの時間を日記風の文章と水彩画で綴った絵本。昔話にもきつね・たぬき・くまあたりはよく登場し、人間との距離が近い野生動物だったのだろうと感じる。そのちょうど良かった距離感は人間によって損ねられてしまった。考えてみれば、災害によって彼らもまた被災しているのだが、そこは野生の強みで巧みに適応を試みている。子たぬき達の日々の成長、いのちの尊さが優しい色合いの水彩画でほのぼのと描かれている。2022/04/05