出版社内容情報
バイオテロのため、人類が滅亡してしまうと知った少女ジェシーは、ある決断をくだす。
内容説明
バイオテロのため、子どもがもはや生まれなくなる疫病に世界じゅうが感染してしまった。このままではいずれ人類は絶滅する。科学の横暴を訴えて暴動にはしる者、宗教にすがる者。十六歳のジェシーは慣れ親しんだ世界の崩壊を目撃する。彼女の父親ら研究者は治療薬開発に取り組むが、かろうじて見出されたワクチンには大きな問題があった。それを知った彼女がくだした決断とは…。少女の愛と勇気を鮮烈に描き出した作品。
著者等紹介
ロジャーズ，ジェイン［ロジャーズ，ジェイン］ ［Ｒｏｇｅｒｓ，Ｊａｎｅ］
１９５２年、ロンドン生まれ。英国王立文学協会特別会員。小説だけでなく、テレビやラジオドラマの脚本も執筆し、シェフィールド・ハラム大学でライティングを教える。初の邦訳となった『世界を変える日に』で、アーサー・Ｃ・クラーク賞を受賞し、また、ブッカー賞の候補にもなった。ほかに、サマセット・モーム賞を受賞したＨｅｒ Ｌｉｖｉｎｇ Ｉｍａｇｅ、ドラマ化され英国アカデミー賞にノミネートされたＭｒ Ｗｒｏｅ’ｓ Ｖｉｒｇｉｎｓ、映画化されたＩｓｌａｎｄなどの著作がある
佐田千織［サダチオリ］
関西大学文学部卒、英米文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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みも
77
アーサー・C・クラーク賞受賞作。これはSF作品に授与される賞ではあるが本作のSF的要素はあくまで背景に過ぎず、その本質は人間の矜持に関わる内省の物語。「妊娠＝死に至る病」が蔓延した世界が16歳の少女を追い詰める。宗教や主義・主張の名を冠した暴力が溢れる環境下で、理想を自己実現しようとする少女の決意は美しくも切ない。親子の葛藤と確執、友人達との断絶、そして自身の心の揺らぎと自己叱咤。その心理描写の切実さが僕の心を揺るがす。父親の目線でしか見ることが出来ない僕は、彼女の父親に同化しその選択の残酷さに慟哭する。2023/12/21
山川欣伸（やまかわよしのぶ）
22
近未来、あるウィルスによって人類の存亡が脅かされる世界。主人公の少女は、世界が混沌とする中、周囲の人々との関わりの中で成長し、変化していく。この絶望的な状況の中で、彼女は自身の役割を見つめ直し、重要な決断を迫られるのだ。 私は本書を読んでいる間、何度も考えさせられる瞬間があった。もし、こんな未来が来たら、私はどうするだろう？ 答えなど簡単に見つかるはずもなく、ただただ悩み続けていた。特に印象に残ったのは、少女の心の揺れ動だ。彼女は、科学者である両親の影響を受け、理性的で冷静な一面を持ち合わせている。2024/10/29
TSUBASA
21
女性が妊娠すると発症し、死に至る病"MDS"が蔓延した世界。そうなっては女性は子供を産めなくなり、数十年後には人間は絶滅してしまう。滅亡の日を前にして人は科学の傲慢さに憤ったり、あるいは男女がいる事の幸せを忘れたりする。そんな世界にうんざりした１６歳のジェシーはMDSから人類を救う実験に自らの命を差し出そうとする。原題は『ジェシーラムの遺言』。重く、辛い話が続くが、考えさせられる事が多かった。愛する子が世界のためになるとはいえ、殉死するのを黙って見届ける親がいようか？子供を持つようになったらまた読みたい。2016/11/04
GaGa
17
これは、短編で凝縮した方が良かったのではないか。いたずらに長すぎる。長い割に詰め込まれているわけでもなく、結論も想像通り。こういうのが一番残念な気がする。2013/12/25
橋川桂
13
ＳＦ的青春小説とでもいおうか、バイオテロの影響で子供が生まれなくなりゆるやかに人類滅亡へ向かう近未来、まだ「北斗の拳」ほどではなくても無法に走る者がいたり、おかしな信仰がはびこったり、どんどんおかしくなっていく世界を舞台の、少女の成長物語という感じ。主人公の決断に賛否分かれそうだし、面白いというには重い話で、誰にでもお薦めの本ではないのだけど、良作。2019/03/09
