内容説明
時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは?巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。
著者等紹介
浅倉久志[アサクラヒサシ]
1930年生、1950年大阪外国語大学卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
419
SF仕立てになっていて、またSFとして高く評価されてもいるのだが、それでも本書の本質はSFにはない。そして、ある意味で極めて現代的なのは、ひじょうにニヒルな神なき世界を描きながら、ヴォネガットはまたここでは実存をも否定していることだ。彼の庶幾する自由の背景にはビートニクな世界観が横たわっているように思わる。物語は、地球、火星、土星の衛星タイタンと惑星的なスケールで語られるが、それらの間には何もなく、また個々の登場人物のそれぞれも本質的な孤独の中に置かれていた。エンディングは救いに見えるがそれもまた虚妄だ。2013/07/21
青乃108号
231
文字密度が濃い本なので、相当に時間がかかった。地球⇒火星⇒水星⇒タイタンと舞台を移しながら、時間をも縦横無尽に越えて存在する1人の地球人の男と一匹の犬。彼らにいいようにされる、1人の大富豪と彼に無理やり押し付けられる1人の女の運命の物語。じゃないな全然違うな、結局何の話だっけ?ようわからん。一体、幾晩かかった事か!何回、途中で寝てしまった事か!俺は何で、こんなにまでして、この話を読んでいるんだと、途中で諦めようと思ったけれどどうしても読みたくて。それはね、あの川上未映子先生が大絶賛されていたからなんです。2025/05/02
ehirano1
210
「時間等曲率漏斗」に代表されるように、これだけ荒唐無稽の壮大さで物語を展開しながら(⇒SFはこれくらいあったほうがイイ!)、「(全ての事は)たいしたことじゃないんだよ(≒たいしたことじゃないと思いなさいよ)」とう著者のメッセージがとても好きです。2024/12/21
徒花
148
まぁまぁよかった。宇宙の特別な空間?に入り込んだことで波動現象的な存在となり、太陽系の広い範囲で過去・現在・未来に同時に存在するようになった大富豪・ラムファードに運命を翻弄される男の物語……なんだけど、実はラムファード自身もまた、ある一つの目的のために利用されていたに過ぎないっていう壮大な物語。人生に意味はあるのか、人間に自由な意志は存在しうるのかを読者に問いかけてくる。でもまあ、たとえ運命に翻弄されていたとしても、それもまんざら悪いことではない。2022/01/05
藤月はな(灯れ松明の火)
134
学校の後輩でSF好きの読友さんからのお勧め本。愚かで矮小な人間たちが贈るグロテスクでコミカルな話。だがテーマは「自分が行おうとしていることは本当に無限にある選択の中から自分で選択した=自由意思によるものか?」という哲学的問いが根底にあるSF。「コンスタント/アンク、最低!」と思いきや、ラムフォードの化けの皮が剥がれたり、サロの狂乱故の自殺が起こるなど、グロテスク。でも最後にじ~んと来るなんて思いも寄らなかった・・・。確かにこれは凄い本だ。2014/08/01