内容説明
1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の人生の歯車は再び動き始める。もう一度、宇宙へ―老境に差しかかりつつも夢のために奮闘する男を、奇才ブラウンが情感豊かに描く古典的名作。
著者等紹介
田中融二[タナカユウジ]
1926年生、48年東京商科大学卒、98年没、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seacalf
80
SFという枠から離れてもかなり楽しめる作品。ハードボイルドな語り口から始まる序盤から心を鷲掴みされた。義足に57歳というハンデをものともせず、ひたすら精力的にぐんぐんと前に突き進む主人公に引っ張られて物語はスピーディーに前へと進んでいく。古い小説なので、人物らの振舞いがエレガント。大筋は木星へのロケット打ち上げの為の奔走劇なのだが、政治の駆け引きや権謀術数、さりげなく散りばめられた名言、そして思いもよらなかった展開が待っており、深い余韻を残す読後感。2017/12/22
hit4papa
74
木星行き宇宙船の打ち上げに、人生を賭ける初老の元宇宙飛行士の物語です。事故で片足を失ったものの、宇宙への道断ちがたい主人公。中盤ぐらいまでは、宇宙飛行の公約を掲げる女性上院議員候補を応援する姿が描かれます。主人公は、対立する候補を蹴落とし、あらためて高度な知識を習得しキャリアつむことになります。上院議員候補と二人三脚で夢をかなえるため邁進しますが、ところが・・・ という展開です。良いお年を召した男性の、再起にかける情熱にしびれます。ブラウンお得意のシニカルな笑いはありませんが、苦い後味はならでは。2018/12/30
かえで
67
57歳の元宇宙飛行士の宇宙狂、マックスは宇宙へ行くという夢を諦めきれずにいた。そこに木星ロケットの打ち上げを公約に掲げた女性議員候補のニュースを耳にし..。宇宙への夢を捨てきれない57歳のオジサンが奮闘する姿を描く話、というと「え?」となってしまいそうだけど(僕はそう思ってしまいました)これが非常に心を打つ話だった。年齢なんか関係ない、なんてロマンのある話なんだろうと思いました。ラストシーンの綺麗さが本当によかった。またマックスを取り巻く人たちがみんな善人なのもいい。読んでよかった。タイトルも大好きです。2015/09/05
催涙雨
54
今自分が生きるこの時代にはまったく歯が立たない物事に対しても遠い遠い未来、人間はきっと克服し、それ以上のことだって成し遂げてみせる。きっと太陽系の外を拝んで、なんなら支配までしている。夢を託してその礎になろう。みたいな、要するに人間賛歌もの。大した障害もなくなんでも都合良く片付き登場人物も人格者揃い。このまま終わるんだったら何の面白味もないロマンスだなと思っていたのだが、着地点は作品のテーマに色を帯びるような虚しさとさわやかさを折半したもので、読後すばらしい余韻を与えるものだった。星屑の想いよ未来へ届け。2018/11/25
ざるこ
50
「自分はこれまで一生懸命何かに取り組んだことがあっただろうか」と思わされる。星にとり憑かれた男57才のマックス。知識と技術と熱意を存分に併せ持つも膝下のない片足は宇宙の旅には致命的。そこに宇宙開発政策を掲げる議員エレンが登場。木星到達の夢に向かって共に奔走する…。星への一途な憧れがとにかく熱い!それを支える思慮深いエレン。序盤からトントン拍子の展開。試練の後半。自業自得とも言える出来事にも諦めず夢を描き後世へ希望を託す。こんな情熱を持つ者たちがいてこそ世界の物事は進化し発展していくのだろうなと感じます。2019/06/14