内容説明
重力定数が10億倍の宇宙に迷いこんだ宇宙船乗組員の末裔たちは、呼吸可能な大気に満たされた〈星雲〉で生き延びていた。彼らは宇宙船の残骸である円盤状の筏〈ラフト〉を中心にして社会を形成し過酷な環境に耐えてきたのだが、〈星雲〉の寿命が残り少なくなったいま、人々の命運も尽きようとしている…。この危機を打開すべく、勇気と好奇心にあふれる少年リースの冒険が始まった。ハードSFの気鋭が放つ、長篇第1作。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
亮人
26
この宇宙とは別の宇宙に迷い込んだ人類の移民船の末裔たちの末路を描いたハードSF。この別の宇宙は、地球ほどの大きさで宇宙空間は大気に満たされており重力定数10億倍(not「重力」10億倍)という特殊環境。そしてもうすぐ終わる宇宙。このSFならではの特殊環境のおかげで異形の世界が広がっている。しかしストーリイは、主人公リースが世界を廻り宇宙の秘密を発見し突破口を開くという、オーソドックスな冒険物語。まあイギリスSFっぽく陰鬱なんで読むのに骨が折れましたわ。でもこの特殊環境の宇宙は想像力を刺激しますな。2014/04/14
ニミッツクラス
23
93年(平成5年)の税抜602円の青背初版を読んだ。バクスターの処女長編にして“ジーリー”の一冊。謝辞ではニーヴン、ブリン、クラーク、シェフィールド、ホールドマンの名前も出た。重力定数の変化はローダンの“大群禍”を、また閉塞世界としてはシュレイダーの“気球世界”を想起させるが、主人公リースの冒険譚はスチームパンクやスペオペより天体物理学的な特異性を物語の背景としたハードSF寄りとなる。アインシュタイン宇宙の遺物や“木、骨人、鯨”の発想はとても面白いのに人間同士の軋轢描写で死者が多いのは辛い。★★★★☆☆2020/02/12
duzzmundo
12
重力定数が10億倍の宇宙に住む住人たちは、星雲の寿命が近づいているという深刻な事態な直面する。彼らは宇宙船の残骸である円盤状の筏で、星雲からの脱出を試みるーーという感じな話です。理数系が苦手なので、よくわからないところもありましたが、格差あり、反乱と暴動あり、不思議なSF的ガジェットありの冒険小説のように楽しく読みました。この作品はジーリー・クロニクルではないもよう。2作目がクロニクルの一作目のようなので、次回のバクスターはそれを読もうと思います。2020/08/29
inugamix
6
わーそこまで環境設定いじってええんか、というぐらいのびっくり宇宙だった。ファンタスティックなほどでありながら我々の知っている物理学による考証も自然な形で読めて安心。少年の冒険・成長譚でもあり王道人間ドラマでもあり。いろんな宇宙クジラがいるけど、ここに登場するものもまた奇妙でロマンティックで魅力的だった。食べられるのかあれ…。2009/10/01
Empirestar
5
世界を知り理解する知識の獲得の過程がなんともエキサイティングな物語だった。この小説のように、小説の構造自体を楽しむケースと、主人公の知識獲得を通じて物語の広がりを楽しむケースが僕の好みなのかもしれない。ある種積み上げていて、そのラストは!と思える小説も嫌いではないのだが、長編作品ではやはり物語の構築、イマジネーション、読み手をいかに巻き込むのかということに帰着するだろうなぁ。本書の場合は、わくわく感に満たされている小説だと思う。2009/10/23
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