ハヤカワ文庫<br> チャンピオンたちの朝食

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ハヤカワ文庫
チャンピオンたちの朝食

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  • サイズ 文庫判/ページ数 383p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784150108519
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

次々と傑作を発表しながら、ポルノ小説と誤解され、まったく芽のでないSF作家キルゴア・トラウト。3度の結婚にも失敗し、話し相手はオウムだけ―不遇の生活を送る彼のもとに、ある日、アート・フェスティバルの招待状がまいこんだ。開催地は中西部にあるミッドランド・シティ。その地でトラウトは、1人の人物と出会い、人生の一大転機をむかえることに…エンドウマメ、恐竜、トラック、国旗、商標など、著者の手になる大胆で自由奔放なイラストが多数ちりばめられ、絵と文章が一体となって不思議な魅力をもたらす、涙と笑いの傑作長篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

330
カート・ヴォネガットによる、ある種の実験小説。そもそも語りが断片の集積だ。そして、二人の主人公それぞれには、およそ接点がない。何を語りたいのかも、実は判然としない。反米プロテスト?それは確かにそうではあるだろう。それにしても、この語りのスタイルは何だ?小説の終盤では、作者自身が顔を出し、登場人物たちの運命までを支配する。それは、おそらくは自己自身の相対化なのだろう。すなわち、支配するものとされるものとは等価なのだ。そこにこそ本書の韜晦があり、深い絶望があるのではないだろうか。ヒッピーたちの共感はその故か。2016/10/27

遥かなる想い

211
文中に挿入される雑多な著者直筆の イラストが印象的な本である。 現代アメリカの病巣を軽快なタッチで 描く。トラウトとドウェインを通して 断片的に描かれる アメリカの風景は 滑稽で 根が深い。 意味不明な展開も 著者の意図通りなのだろう。 物語の展開とはほぼ無関係に あちこちに散りばめられている、 突発的に出現する風刺の効いたトピックを 拾い集めて楽しむ、そんな読書だった。2017/05/04

新地学@児童書病発動中

133
ヴォネガットの7作目の小説。語り口は軽妙だが、内容は重く、悲しい。初期の作品のような溌剌としたユーモアは影を潜め、アメリカ社会の病根を抉り出す内容。これまでの物語で脇役のことが多かったSF作家キルゴア・トラウトが主役を務めている。もう一人の主人公であるフーヴァーの仕事が車の販売という点が象徴的だ。アメリカの主要な産業に対する作者の皮肉が込めれている気がする。そのフーヴァーは結末で狂気がエスカレートして大勢の人を傷つける。この部分にはアメリカ社会に対する作者の強い怒りを感じた。(コメント欄へ続きます)2016/01/27

ケイ

118
ヴォネガットの口調は淡々としているが、語られているのは狂気。人々の狂気の元にあるのは、アメリカという国の狂気、富の不均衡。練られ洗練された絶望でもパロディめいているのは、きっと細切れの段落に挟まれるうまいような下手なような絵や軽妙な語り口のせい。そして、登場人物たちがそれでもみんな生きていること。表紙なんて電気椅子なんだけど…。これを書くことで作者には漸く捨てられるものがあったはずであり、それが絶望的状態を一筋の光で照らしているように思った。スローターハウス5も良かったが、私は断然こちらが好きだ。2016/03/30

まふ

101
「スローターハウス5」のようなダイナミックな面白さを期待したが、大きな筋もないまま著者が書きなぐった随筆ともつかぬドタバタ物語という印象に終わった。自筆のスケッチ挿絵付きで絵は確かにうまいものもある。米国の環境汚染、金権主義、コマーシャリズム、人間の機械化などの批判をしている、とあるが、筆致が軽すぎて作者の真意をつかめないもどかしさを感じる。逆に1973年の作品なのに黒人を「ニガー」と言いまくり、日本人を「コメを燃料としている黄色いロボット」と言わせたりして著者の真意を疑わせる部分があった。G1000。2023/11/15

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