出版社内容情報
マンハッタンの廃墟で、史上最後の合衆国大統領が物語る、愚かしくもけなげな人間たちが演ずるドタバタ喜劇の顛末とは……
ある日突然どういうわけか地球の重力が強くなり、そこへまた緑死病なる奇病まで発生して世界は無秩序、大混乱! アメリカ合衆国もいまや群雄割拠、ミシガン国王やオクラホマ公爵が勝手放題をしている始末。ジャングルと化したマンハッタンの廃墟では、史上最後の合衆国大統領が手記を書きつづる--愚かしくもけなげな人間たちが演ずるドタバタ喜劇、スラップスティックの顛末を……涙と笑いとハイホーに満ちた傑作長篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
♪みどりpiyopiyo♪
48
ヴォネガットの頭の中のスラップ・スティックが溢れ出たみたい。自伝小説とのことで、冒頭は私小説的な語りから始まりますが、本編に入ると虚構感が色濃くなり、中盤で一気にヴォネガットらしいSF感が立ち現れて来ました♪ ■どうやったって対処できない事象を受け入れ、親切を以って淡々と生きる人々。たとえ世界が滅びてもその先に希望はあるのだ。■最後はあまりに唐突だったけど、ウィルバーはきっとイライザと再会し、そして人類は救われるでしょう。ドタバタとハイホーに満ちた怪作でした。もう孤独じゃない! ハイホー☆ (1976年)2018/12/11
ころこ
43
初期の村上春樹と高橋源一郎に似ています。「ハイホー」は村上作品に出てきていたような。文章の呼吸が短いのは高橋に似ているので、高橋寄りだと思います。日本の団塊世代の作家に大きな影響を与えています。短いストロークは小説ではなく詩として読むと、時間と記憶の砂漠化に苦しまなくて済みます。自分を語ると家族の話になるのは思えば小説のテーマそのもので、高橋の初期作品も娘など家族がよく出てきていたような…しかし、若い世代では、もはや家族の話が出来る手応えのない人が増えているというのが社会の実感ではないかという気がします。2022/02/24
Y2K☮
40
SF? 過去に読んだ作家だと舞城王太郎とブコウスキーの近辺か。語り手は緑死病が蔓延し、重力が暴走したアメリカの最後の大統領。奇形ゆえに両親から疎まれつつも別邸で王子の様に育てられた彼は全国民に数字や鉱物、動物等から取ったミドルネームを与え(幼稚園のたんぱぽ組とかカブスカウトのりす、うさぎ、鹿、熊みたいな?)、カテゴリーが同じ人は見知らぬ同士でも家族とした。親を選べる。国家が終わり、幾つかの家族だけが残る。主人公と妹はまるで萩尾望都の「半神」。有名無実な「絆」なる言葉を本気で形にしてみたカオスな未来予想図。2016/03/29
Akihiro Nishio
21
エッセイに続いて、長編小説を読む。次から次へと起こる奇妙な物語、双子の秘密、そして孤独をいやすための拡大家族というアイデア。きっと、発表された当時は、テレビでコメディアンが使っているような言い回しが、そのまま小説で使われているとかが、大変センセーショナルだったのだろうなとは思うが、今読むと「そういう作風ね」と思ってしまう。自分はこれ1冊でいいかな。2020/10/28
fseigojp
21
いよいよ後期ヴォネガットが始まった記念的作品2016/07/07