出版社内容情報
〔ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞〕両性具有人の惑星、雪と氷に閉ざされたゲセンとの外交関係を結ぶべく派遣されたゲンリー・アイは、理解を絶する住民の心理、風俗、習慣等様々な困難にぶつかる。やがて彼は奇怪な陰謀の渦中へと……エキゾチックで豊かなイメージを秀抜なストーリイテリングで展開する傑作長篇
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
469
SFがSFであるが故になしとげた、屈指の世界像がここに現出する。ル・グインの想像力にはただただ驚嘆するばかりだ。作品の全編を覆うのは、圧倒的な「冬」の世界だ。それは文字通りに風景としてのそれであるとともに、コミュニケーションの困難性においても冬だ。そうでありながらも、最後には感情と精神の交換が描かれる。ただ、それは悲哀の感情においてしか成立することはなかったのだが。この世界観は何なのだろう。物語は私たち読者を混沌の中に投げ込む。私たちは、この圧倒的な物語の前にただただ呆然と立ち尽くすのみなのである。2017/07/25
遥かなる想い
187
惑星ゲセンの物語である。 SF作品だが、両性社会の特異性も 盛り込み、独自の雰囲気を醸し出す。 長い冬の旅の果てに 行き着いたところは 何だったのか? SFの世界だが、極めて風刺的な、そんな 印象の作品だった。 2019/04/07
Die-Go
161
追悼ル=グウィン。図書館本。人類が両性具有の《冬の》惑星ゲセン。そこへ我らが地球の使節として訪れたゲンリー・アイ。ゲセンの文化に戸惑いつつもなんとか任務を果たそうとするゲンリー。しかし、それはゲセン上層部の陰謀の渦中へと巻き込まれていく。 最初はなかなか苦労したが、途中から一気に読ませる力を持つ。エンディングがちょっと不可解だったが。★★★☆☆2018/02/07
まふ
130
世上高評価のSF巨編、とのことで期待した。時代は何時か不明。エクーメン暦1490年からスタートする。場所は惑星<冬>で地球との相対関係は不明。登場人物は人間以外は不明。気候は地球上の極北レベル。登場人物は「人間」だが、どうやら両性具有の穏やかな人々。そこに人間的な主人公が登場する。作者はこの基本条件をもとに緻密に舞台を設定した。登場人物、社会制度、法律・文化等が夫々の名称を一つづつ持ちつつ表現される。読者はこの「名称の噴出」および夫々のもっともらしさ(plausibility)に圧倒される…。⇒2024/07/20
みっちゃん
130
お気に入りさんに教えて頂いた。傑作。雪と氷に閉ざされた惑星に降りたった宇宙同盟の使節と、追放の憂き目にあった宰相の「友情」という言葉では語り尽くせない深い結びつきの物語。この惑星の両性具有の人々の「愛の様式」については「世界の誕生日」で知ってはいたが、やはり作者の想像力・創造力に驚かされる。序盤は登場人物の言い回しの解釈に苦しんだが、終盤、酷寒の大氷原を二人で横断する80日間の描写は圧巻。そして胸の熱くなるラスト。素晴らしい読書体験だった。2016/06/08