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出版社内容情報
仙界の太白金星に住む李長庚は、観音菩薩の奸計によって天竺へと向かう三蔵法師に八十一の試練を与えることになった。だがそこには、仙界の大物たちが企てる隠された目的が見え隠れしていた。人間界も巻き込んだ壮大な計画の鍵は、孫悟空にあるというが……。
内容説明
仙人の李長庚は昇進の望みを捨て、天庭で隠居生活をするつもりでいた。だが、新しく任命された西方の幹部・観音菩薩に、天竺へ向かう三蔵に課す八十一難の企画立案をうまく押しつけられる。その仕事は煩雑で、予想外の出来事が後を絶たない。予算不足、同僚間の争い、天下りの氾濫。さらに悟空に身分を奪われたと主張する猿が現れる。無数の因果が絡む雑事に悩まされる李長庚は、仕事の中で、自身の昇進と、仙界の混乱を起こした真実のどちらをとるか選択を迫られ…中国古典『西遊記』を舞台裏から描くエンタメ小説。
著者等紹介
馬伯庸[バハクヨウ]
作家。人民文学賞散文賞、朱自清散文賞、茅盾新人賞、駿馬賞受賞。その作品は「五・四運動以来の歴史的文学創作の系譜」に沿っていると評価され、「歴史的可能性小説」の探求に力を注いでいる
齊藤正高[サイトウマサタカ]
愛知大学中日大辞典編纂所研究員、愛知大学・岐阜大学など非常勤講師、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
106
西遊記を裏側からプロデュースする天界の仙人。2025/05/17
たま
75
『両京十五日』が面白かった馬伯庸さん、この本も面白い!西遊記を下敷きに仏教と道教の世界観と用語で溢れるが、馴染のない読者にも自然と分かるように書く技が見事。冴えない?神仙の李が観音と協力し仏教・道教双方のお偉方の意向を汲みつつ玄奘の苦難を用意する。組織(中国共産党でも日本の企業でも)の上層部を忖度しつつ働く中堅社員を思い、応援に力が入る。コネの有無で苦汁を飲まされた悟空、六耳の悲哀、計画された苦難を乗り越えるより民の苦しみに尽くしたい玄奘、最後にある選択をする李のヒューマニズムにそう来たか!と感動した。2025/02/23
おたま
61
『西遊記』は小学生の頃に、初めて読書の面白さを教えてくれた愛読書。『西遊記事変』(原題は『太白金星有点煩』)は、『西遊記』を前提として、その西天取経を目指す玄奘一行の旅を、緻密にプロデュースしフォローする舞台裏の物語。企画・立案・調整に奔走するのが、太白金星=李長庚と観音菩薩。実は太白金星は道教の神仙側の者であり、観音菩薩は仏教の仏である。つまりここで、道教と仏教とがコンビを組んで一行の旅を穏便に進めようとしている。上層部の意向を気にし、下界で起こる様々なトラブルを解決して、旅を進めるが・・・という話。2025/04/07
sin
59
プロレスには筋書きがあると云われるが、西遊記にも何とかのりこえられるくらいの劫難が仕組まれていた?これは“護法”と云い素質のある神仙や凡人に与えられる筋書きらしいが、ここに天界の思惑が絡んでくる。担当を委任された道教の神仙“李長庚”と、仏教の担当者である観音大士はお互いに牽制しあいながらもやがて協調して天界の思惑に対応して三蔵一行を導いて行く訳だが、悟空になれなかった野ザルの精、女癖の悪い天蓬、義憤を持つ金蟾、悟空・八戒・沙悟浄、其々の因縁をも孕んで李長庚はその因果に巻き込まれて東奔西走することになる。2025/04/19
藤月はな(灯れ松明の火)
54
玄奘法師一行の天竺行の劫難指定とサポートを頼まれてしまった太白金星。西遊記一行が天竺行を無事に終わらせるまで彼に気の休まる時はない。同僚となった観音の報連相なしのちゃっかり依頼に怒りつつも、玄奘の野心と彼の道行を阻もうとする仏弟子の妨害、更には天界の縁故関係や派閥のいざこざが絡む同伴者に頭を抱えるのだから!しかし、世知に長けた彼は事態を丸く、収めようとする。それがある問題への苦い回答になるとも知らず・・・。天界でも事なかれ主義で縁故によって贔屓されてそうじゃない者は割を喰うって『天 官賜福』でもあったな。2025/03/13