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内容説明
都の北西、漢源の町は神秘的な湖のかたわらに横たわる。その湖水で溺れた者の死体は決して上がることはなく、死者は町を彷徨い歩くといわれる。その地に赴任したディー判事は、地元の名士たちが歓迎のため催した船上の宴に出席した。宴もたけなわ、ひときわ美しい芸妓が判事に近づき、囁いた…この地に陰謀があります。だがその真意を語ることなく、彼女は何者かによって湖水へ突き落とされ無惨に溺死してしまった。されば、あの告発は単なる芸妓の戯言ではない。判事の頭脳が目まぐるしく回転する!著者初期の傑作が、待望の最新訳で登場。
著者等紹介
ヒューリック,ロバート・ファン[ヒューリック,ロバートファン][Gulik,Robert van]
1910年オランダ生まれ。外交官として在日大使などを歴任、また東洋文化の研究でも多大な成果を残した。唐代の名宰相を主人公に据えたディー判事シリーズで世界的な人気を得る。1967年死去
和爾桃子[ワニモモコ]
慶應義塾大学文学部中退、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
36
これほどまでに才気あふれる人物像でありながら、組織の中で誠実に自身の役割を果たす判事の姿がある意味、後半の見所と思いましたが、今回、記憶に強く残ったのは著者あとがきの「古中国では専制君主制にもかかわらず、中国人は常に民主的な開明精神を有している」との文章、中国で起こっている排日運動は開明とはいいがたいものの中国人の民衆の力を感じます。そこには国粋主義の教育、民衆の立場、情報操作等、様々な事物が影響しているでしょうが…それに反して日本人は自国のことに無関心過ぎやしない?などと関係ないことを考えてしまいます。2012/09/17
紅はこべ
22
儒者として怪奇現象には懐疑的なディー判事だが、本作はシリーズの中でも怪奇趣味が強い印象。このシリーズは結構暗号ものが好き。本作は暗号としては初歩の部類だが、西洋の作家にとって、棋譜を使うというのが斬新な趣向に思えたのだろう。本シリーズは基本的にモジュラー型が多いのだが、本作は一つの事件に集中。殺された芸妓杏花のキャラが出色。ヒューリックはなかなか女性を描くのが巧みだ。2009/11/29
tom
17
解説に唐の時代の官僚制の説明がある。主人公のディー判事は、官僚制度の末端の地方行政官(日本でいえば、せいぜい村の規模)。行政官の仕事を監査する組織があり、不意打ちの査察を繰り返す。管轄地内の不始末は、行政官の責任。仕事不行き届きということで処分を受ける。なかなかハードな仕事なのだ。ということで、ディー判事は、今日も、殺人事件の解決に奔走。これが中央政権に対する反乱分子の摘発までに至るという波乱万丈。なかなか面白い。古代中国、ひょっとしたらこの本にあるとうりの国だったのかと思わせるのも楽しい。2018/10/07
アトレーユ
7
安定のシリーズ。だんだん水戸黄門みたいなイメージになってきた(笑)でも活劇っぽくハラハラどきどきで読ませる部分もあり、一気に読める。2025/04/17
晴巣蓮之介
4
今のところシリーズ最高傑作(って4冊しか読んでないけど)。 3つの事件が複雑に絡み合って最終的には国家の一大事にまで発展。 普段偉そうな狄判事が巡察官相手じゃ型なしなのが笑えたw2011/08/14