出版社内容情報
アニメには描かれなかった「喪失と再生」の物語
世界的な人気を誇る日本のアニメ作品が、ゲーテによる教養小説の流れを汲み、19世紀のヨーロッパ社会や宗教観を色濃く反映した原作をもとに作られたことは、あまり知られていない。登場人物の心の葛藤や闇、豊かな宗教性・自然観にも焦点を当て、アニメには描かれていない原作の深淵な魅力に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
99
6月の名著は、『アルプスの少女ハイジ』。講師は早稲田大学教授、ドイツ文学者の松永美穂さん。本作を「喪失と再生」の物語として捉え、作品の時代背景や作者シュピリの人生を紐解きながら解説された。テレビアニメと原作では異なる部分も多く、原作では、おじいさんの暗い過去、ペーターの攻撃性や嫉妬深さ等も描かれ、アニメにはない陰翳のある文学作品としての奥深さが描かれる。単なる自然賛美に終わらず、教育や宗教の持つ意義にも触れ、心身を病んだ人たちの治癒と自己回復の物語として、時代を超え生きるヒントをくれる児童文学の傑作だ。2019/06/30
れみ
84
NHK-Eテレ「100分de名著」のテキスト。アニメのイメージが強いぶん、原作でのお話の展開や登場人物のキャラクターの違いにびっくりする部分がかなりあった。当時のスイスをはじめとしたヨーロッパの社会情勢などもわかりやすく解説されていて、写真で物語の舞台を想像しやすくもなっていて、読んでみたいと思ったし、アニメもあらためて見てみたくなった。放送では、安達祐実さんがたくさんの登場人物をひとりで演じ分ける朗読を堪能。本当に素晴らしかった。2019/06/24
みなみ
30
子供の頃読んだだけで、ちゃんと読んだことがないハイジ。時代背景などが分かって、それでこういう意味があるのだとわかりました。これは本当に原作読まなくてはと思いました。アニメを何回も見すぎたせいで、クララの車椅子を壊したのがペーターだという事を忘れていました。2019/10/04
コニコ@共楽
24
2年前の6月に「100分de名著」で取り上げられた『アルプスの少女ハイジ』のテキストです。撮り溜めてあった録画を見た後、書かれた時代背景などを確認しながら、このテキストで解説を辿ってみました。日本が幕末から明治以降の時代に、ヨーロッパのスイスやフランクフルトがどんなだったかなんてほとんど知りませんでした。ホームシックがスイス人の出稼ぎ由来だったことや、プロテスタントについての解説も大変興味深いものでした。2021/11/29
北風
21
ちらっと番組を観て、原作を読んで、こっちも読みたくなって。内容的に、アニメを目の敵にしすぎな感じがしたけれど、かなり興味深い。内容も、確かに「秘密の花園」に似ているけれど、こちらは宗教色が若干強め。ハイジはどちらかというと、永遠の少女たる「アリス」のポジションに近い気がする。アリスの人格はまた全然違うんだけど、無垢な存在って言うのがね。だって、ハイジはマザーテレサとかナイチンゲールみたいにはなりそうにない、というか、ならないだろうし。義務とか知識ではなく、純粋に誰かに対して献身的な存在なのだよね。2019/07/14
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- 和書
- A LONG DAY