出版社内容情報
実は謎の多い幕末・明治の実情を巨匠が語り下ろした、ベストセラー&ロングセラー『NHKブックス 「明治」という国家(上・下)』
内容説明
「明治」は、清廉な“公”感覚と、道徳的緊張=モラルをもっていた。維新を躍進させた坂本龍馬、国家改造の設計者・小栗忠順、旧国家解体と新国家設計の助言者・勝海舟と福沢諭吉、無私の心をもち歩いていた巨魁・西郷隆盛―。国民国家形成を目指した“明治の父たち”は真に偉大だった。どのように偉大だったのか?偉大さはどこから来たのか?歴史小説で日本人の明治観の基礎をつくった国民作家が、人類普遍の遺産としての「明治国家」を清冽な筆致で綴る。著者畢生の日本論にして鮮明な日本人論、一巻本で登場!
目次
ブロードウェイの行進
徳川国家からの遺産
江戸日本の無形遺産“多様性”
“青写真”なしの新国家
廃藩置県―第二の革命
“文明”の誕生
『自助論』の世界
東郷の学んだカレッジ―テムズ河畔にて
勝海舟とカッテンディーケ―“国民”の成立とオランダ
サムライの終焉あるいは武士の反乱
「自由と憲法」をめぐる話―ネーションからステートへ
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年大阪に生まれる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。産経新聞大阪本社文化部に在職中、59年『梟の城』により第42回直木賞受賞。芸術院会員。91年に文化功労者、93年に文化勲章を受章。1996年2月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
80
江戸から明治に変わる時代に一体何が起こったのかを、著者ならではの一筆書きのような語り口で一気に読ませる11章。イデオロギーではなく、リアリズムを通して、「座布団の下の話」として「坂の上の雲」など小説のモデルになった人々のエピソードなどから、1868年から1912年まで44年間つづいた「明治国家」を語る。司馬史観は現代から見ると誤謬も指摘されるが、歴史とはそれを語る人ごとに見方が変わるということを前提にしても、勤勉と自律、自助をモットーに「明治国家」を生きた人々への著者の圧倒的な信頼と熱い想いに圧倒される。2020/12/09
Book & Travel
44
息子が学校で近代史を習っていて色々聞いてくるので、改めて明治時代の本をと手に取った一冊。様々な切り口で明治国家を捉えた11章から成る。「竜馬がゆく」「翔ぶが如く」「坂の上の雲」辺りで触れられた人物や余談も多数登場。久々に読む司馬さんの語り口が心地好い。小栗忠順、滝廉太郎、新島襄といった小説にあまり登場しない人物の話も興味深い所が多かった。明治の見方・評価は様々で、後の軍国主義に繋がる部分には複雑な気持ちにもなるが、侍の国から近代国家を作ろうと無私の心で奮闘した人々の姿からは、大いに学ぶべき事がありそうだ。2022/11/11
ばんだねいっぺい
25
なるほど、司馬さんより、荒俣さんの方が合うのだとわかった。司馬さんは存外、日本史以外の方が面白いかもしれない。咸臨丸のくだりは、比較ができて、楽しい読書となった。2024/12/28
ちゃま坊
19
先日読んだケン・フォレット「火の柱」ではカトリックとプロテスタントの対立の歴史を描いていたが、なんとここにもリンクしていたのか。勝海舟の学んだ蘭学はオランダ、咸臨丸で向かったのはアメリカ。明治という国家ができたのは、プロテスタント国家の力が大きいと言う。カトリック国家はフランス以外はどうもふるわない。明治6年まで日本はキリシタン禁制を続けていたというが、キリシタンとはカトリックのことを指すらしい。2021/11/03
はちこう
10
1989年にNHKで放送された「太郎の国の物語」という番組で司馬遼太郎が語ったことを本にした作品。まるで司馬の講演会か何かを聞いているような気分になる。咸臨丸における勝海舟のエピソードが2度登場する。人事に不満があった勝は艦長室に引きこもり、船から降ろせと騒ぎ出す始末。そんな勝を目の当たりにした福沢諭吉は、勝を生涯敬遠したらしい。司馬は、こういう勝の〝えぐさ〟は苦手としながらも、偉大な人物で大好きだという。小栗上野介、荒城の月、東郷平八郎、新島襄のエピソードも良かった。2022/03/11