内容説明
じっとこちらを見つめるイカのつぶらな瞳。鏡に映った自分にそっと触れるイカの長くて細い足。日本の食卓に欠かせないイカだが、その生態や生活史にはまだまだ謎が多い。産卵場所や赤ちゃんの形、寿命から特異に発達した神経系と巨大脳まで、イカのすべてを明らかにする。そのユニークな行動からイカの知性の有無を問い、海の霊長類たるイカから頭足類学を提唱する。若年研究者の大胆な試みの書。
目次
序章 イカの素性をさぐる
第1章 イカの脳をさぐる
第2章 イカの社会性をさぐる
第3章 イカの賢さをさぐる
第4章 イカのアイデンティティーをさぐる
第5章 イカの赤ちゃん学をさぐる
終章 イカの素顔をさぐる
著者等紹介
池田譲[イケダユズル]
1964年生まれ。北海道大学水産学部卒業。同大学大学院水産学研究科水産増殖学専攻博士課程修了。博士(水産学)。スタンフォード大学、京都大学、理化学研究所を経て、現在、琉球大学理学部海洋自然科学科生物系教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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calaf
12
イカの知性に関する最先端研究の紹介本。独り(一匹)で育ったイカが鏡を見た次の日...この結果は(読んでいるだけでも)衝撃的でした...2012/04/22
やすお
10
何かの本で、イカやタコは賢いということを読んだ。興味を持ったので、その本で紹介されていた本書を読んでみた。本書は生物学の難しい論文ではなく、一般向けに書かれたものである。難しいところはなく、非常に読みやすい。イカが鏡に写った自分の姿に興味を持ったり、個体を見分ける目と脳を持っていることなど、イカの知られざる面を知ることができた。著書の余話も適切に混じっており、この分野での研究の現場の声を実感こめて語られている。この本を読むと、イカが可愛く見えてしかたなくなる。敬意まで表してしまいそうだ。2020/10/03
とんかつラバー
8
「イカの心」とタイトルが少しキャッチーだが、イカの賢さについて(時々タコ)群れから隔離したイカに鏡を見せると次の日死んでいた話は興味深い。文章が所々読みづらいが、実験のための飼育の苦労から(水から揚げるだけで死んでしまう事もある)鏡像認知まで、普段気軽に食べている生き物であるがその知能に感心させられる。2020/07/10
🍭
7
同著者の🐙本を読んで、それ以前の時期は🦑をやっていたということで手に取った。頭足類の知能の高さは間違いのないものなのか、今後どういった手法で説き明かされていくのか楽しみ。水産資源としてのイカは年々減っているというのをよく見るようになって残念に思うけれど、あのうねうねスイスイ泳ぐ姿は愛おしいし、甘味と旨味を活かした日本のイカ料理たちは大切にしていってほしいと思う。バッタ研究の人の著書を読んでいても思ったけれど、やっぱり生物を扱う研究はシンプルな閃きが大切なんだね。『比較認知科学への招待(省略)』読みたい2022/05/17
Re哲学入門者
5
あまり有名ではない本だが割と面白い。筆者自身の哲学的考察はなく、あくまでも実験の結果とそれに準ずる考察のみ。内容としてはマキャベリ的知性仮説に重点を置き、イカの社会性について調べている。それ故「イカの心」とは少し過言なのではないかなと思う。 「メタゾアの心身問題」のような深い内容を期待していただけあって、少々残念。 2025/02/17