内容説明
二〇〇一年アメリカ、九・一一の悲劇―それは始まりでも終わりでもなかった。世界は新しい戦争の時代にはいった。文明間の衝突ではなく、個人対国家の戦いである。ヨーロッパとイスラーム各国でのフィールドワークを通し、ムスリム(イスラーム教徒)が直面する現実と広がる不満の裾野を描出する。テロに傾斜する不満の裾野をいかに崩すか。憎悪と暴力のスパイラルを止める鍵を、世界に向け提起。
目次
序章 イスラーム主義者は誰と戦うのか
第1章 新しい戦争・個人としてのムスリム対国家
第2章 ヨーロッパ・共存と差別のダブルスタンダード
第3章 トルコ・西欧化の果ての疎外
第4章 和解の鍵はどこに
終章 共生の原像と国家の壁
著者等紹介
内藤正典[ナイトウマサノリ]
1956年生まれ。1979年、東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学分科卒業。1983年、東京大学大学院理学系研究科地理学専門課程中退。東京大学助手をへて1986年に一橋大学社会学部専任講師、助教授。1997年から一橋大学大学院社会学研究科教授。社会学博士。専門:現代イスラーム地域研究、イスラームと西欧の相関文明論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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showgunn
16
イスラーム国と西欧諸国がどのような歴史を辿って今のような状況になったかということをわかりやすく整理して教えてくれる本。とにかく歴史というものは実に複雑に絡み合っているし、また人間の行動や思考もそれにものすごく大きく影響されていることがわかる。無知故の偏見が自分の中にもあったけど、この本を読んだことで少しでもそれが無くなっていたらいいなと思う。何しろ国際政治や世界史については何も知らないので時間のかかるハードな読書であったが、本当に読んでよかった。2016/11/09
メルセ・ひすい
1
7-01 赤6-100 イスラームの解説とヨーロッパの世界としての位置づけ。宗教から問い直す世界像。…勝利者としての基督教とイスラーム。世俗化した西欧とイスラームの規範体系の隔たりのなかで双方の文明に属する人間同士の衝突だとする。世界は新しい戦争の時代にはいった。ヨーロッパと中東の現地調査からイスラーム青年の現状と心情を描き、和解への道を示す。憎悪と暴力のスパイラルを止める鍵を、世界に向けて提起する。2006/06/01
かず
0
イスラーム社会の持つ規範性と西欧近代主義の規範性との相違を丁寧に素描している。安直な善悪二元論ではなく、そもそもの成り立ちの違いを述べている点で興味深い。2011/09/22